卓越した技術で色鮮やかな漆器を制作する職人が秋田市にいる。漆塗り一筋60年余り。ただ一人の「秋田塗」職人の作品にかける思いに迫る。

 しっとりとした艶やかな彩りが施された漆器の数々。作品を手掛けるのは、秋田市で漆芸工房を営む齋藤國男さんだ。この道63年、漆塗り一筋。秋田市の伝統工芸品「生駒塗」の工房で長年働いた後、26年前に独立した。

 齋藤さんが手掛ける「秋田塗」は、すべての工程を一人で行う。艶やかな色を出すためにやすりで磨き、一つの工程が終わるごとに1日以上かけて乾燥させる。何度も何度も繰り返す作業。時間と労力がかかる。

 漆芸工房 齋藤・齋藤國男さん:
「この上に乾いたら漆を塗って、それから螺鈿(らでん)などの工程をやって、裏表。だから時間がかかる」

 また、天候や季節によって漆の乾き方が違うため、二つとして同じ作品に出会えないのが漆塗りの魅力だ。

 「連峰」は、太平山の峰を、貝を使って装飾する螺鈿という技法で表現した作品。何度も研ぎ出すことで色や雰囲気が現れてくる。完成までに約3カ月を要した作品には、齋藤さんの思いが込められている。

 漆芸工房 齋藤・齋藤國男さん:
「数え切れない苦労をしてきた。われわれの時代はそうだった。時間がかかって時間がない。夜中まで働いてきた。『生駒塗』にいたおかげで、いろいろなことを勉強してきたことは幸せじゃないかなと思う。漆器は手をかければかけるほど良いものができる。手をかけることはすごく良いこと」

 漆塗りは、埃(ほこり)が一つ付くだけでやり直すほど繊細な技術が必要だ。その分、完成した時の美しさが際立つ。

 現在「秋田塗」を手掛けるのは齋藤さんただ一人。「秋田塗」を次の世代に受け継いでもらおうとワークショップを開いて思いをはせている。

 漆芸工房 齋藤・齋藤國男さん:
「秋田で漆をやるなら『秋田塗のなになに』と作者の名前を付けて『秋田塗』をやってもらえたらいい。大学生も卒業後、秋田市に住んで漆塗りの文化を高めてほしいと思う。大いに『秋田塗』を使って、誰それの作と名乗ってやってもらえたらいいのではないか」

 若いアイデアや知恵を取り入れながら次の世代へ。齋藤さんはこれからも「秋田塗」を守り続ける。

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