特集は芸術作品のレンタルです。障がい者が生み出す芸術「ザワメキアート」。その絵画のレプリカを貸し出す事業が始まりました。作家は「見てもらえてうれしい」と歓迎しています。
■障がい者が描く芸術的アート作品
大胆な色使いで描かれた山。
作家の神崎秀康さん:
「見て書くんじゃないの、自分で考えて書くの」
画面いっぱいに広がる空想の世界。
作家のカミジョウミカさん:
「夢を覚えていて自然に身について絵にすることが多い」
■絵画作品のレンタル開始
障がいのある人々が持つ芸術性や創造性。触れると、心がざわめかずにはいられません。そうした作品を「ザワメキアート」として紹介する展覧会が2016年から開催されています。
もっと多くの人に触れてもらおうと展示された絵画作品のレプリカをひと月4000円で貸し出す事業が始まりました。
県障がい者支援課 丸山夏穂さん:
「県内でも展覧会を開催しているけどそこに来ていただく方は障害者の創作したアート作品に興味のある方に限られてしまうので、県民の人に広く見ていただくきっかけづくりになればと」
■展示した金融機関に作家が来訪
「長野ろうきん」の本店。入ってすぐの場所に飾ってあるのは、長野市の如月さんの作品「チェインギャング」です。
如月さん:
「飾っていただけると聞いてうれしいと同時にびっくりした」
如月さんの妻:
「見ててくれる人がいてとてもありがたい」
展示初日、妻と一緒に見に訪れた如月さん。県障がい者福祉センターの絵画教室に通ったのを切っ掛けに、2009年から創作活動を続けています。
■文字がベースにある絵
明るさの中にどこか不穏さも漂う不思議な絵。本来は「残虐」の2文字が描かれた作品と一対になっています。文字を書くところから製作が始まり、2、3年かけて描き上げたそうです。
如月さん:
「(テーマは)生きていくことの難しさとか大変さみたいな。でもそこに希望があってほしいとか喜びもあればいいと思っていた」
今回のレンタル事業は経費を除いた金額が作家に還元され、経済的な自立に向けた一助にもなっています。
如月さん:
「ありがたいです。ありがたいと思うのと、何に使えばいいんだろうと考えてしまう」
展示した長野ろうきんはー
長野県労働金庫 中村賢二 本店営業部長:
「共生社会で障がいのある人もない人も共に生きていきましょうという目的が私たちの理念と合って展示をするように。ドキドキわくわくして仕事したいと常日頃思っているので、この事業をやらせていただくことで私の気持ちもざわめくのかなと」
■色彩豊かな「山」旅館でも展示
長野県小諸市の旅館「中棚荘」。大胆な色使いで山を描いた神崎秀康さんの作品「山」が飾られています。
宿泊客:
「凡人の我々が考えるような色使いじゃなくてタッチも面白い」
「絵はたくさん見るけど、色彩の豊かな絵は自分にない感覚なのでなぜこの色がこう感じるのか、その人の心情、人生が豊かで明るい方なのかなと感じた」
■作家は展示を喜ぶ
知的障害を持つ作者の神崎さん。就労支援施設で働き朝や昼休みなど作業の合い間に絵を描いています。水性マーカーやクレヨンで描かれる作品。モチーフの多くは山です。
神崎さん:
「富士山。富士山の下にも山がある、煙出てるから浅間山」
30年ほど前に絵画教室で絵の指導を受けてから本格的に描き始め、買い取られた作品もあります。
神崎さんも今回の展示を喜んでいます。
アシストこまば 松井さん:
「飾ってもらってる。すごくありがたいことみんなに絵を見てもらいたいという思いが実現できるのでありがたい」
旅館は、同じ地域に住む作家の作品を地域の魅力の一つとして捉え、展示しています。
中棚荘 富岡直希 社長:
「宿泊者の方に地域の魅力や良さを伝える役割を果たしていく中で、アート作品から地域の良さを知ってもらいたいと事業に参加させてもらった。今までにないような切り口で知ってもらいたいと」
■県庁の作品描いた作者は受賞歴も
県庁にはカミジョウミカさんの作品が展示されています。
カミジョウさんは安曇野市在住。生まれた時から全身の関節が脱臼し易く、常に痛みと向き合いながら、生活してきました。
カミジョウさん:
「痛みがフワッと消える時がある。絵を描いていると集中して、両親に止められるほど」
絵を描き始めたのは入院中の19歳のころ。
カミジョウさん:
「寝たきりでも絵があるおかげで再生できた。自分のやれることが見つかった感じ」
コンテストで受賞するなど作品の評価は高く個展も開催しています。
■レンタルで「心ざわめく」瞬間を
作品を見た男性:
「活力が湧いて元気が出てくる、みてるだけで楽しい感じ」
「すごくカラフルできれい。これだけ描けるということは相当努力されて技術力を高めていると思う」
見る者の心を捉えて離さないアート。レンタル事業が広がれば「ざわめく瞬間」がもっと増えそうです。
県障がい者支援課 丸山夏穂さん:
「見ててざわざわ、わくわくする、で、何をモチーフに描いたか教えてくれない作家さんもいるので、こちらがどういう風に書いたんだろうと想像力をかき立てられるのがすごく魅力。細部までこだわりのある作品が多いのでそういうところを見て楽しんでもらえたら」
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