静岡県御殿場市は秩父宮記念公園(同市東田中)の母屋の燻蒸(くんじょう)体験を、ふるさと納税の新たな体験型返礼品とすることを決め、10日、報道陣向けの体験会が開かれた。母屋は1941年から約10年間、昭和天皇の弟である秩父宮さま(1902~53年)が過ごしたかやぶきの建物で市文化財に指定されている。宮さまの暮らしぶりや燻蒸により、かやが守られていることを知ってもらうのが狙いという。
母屋は1723年に建築され、かやの防虫や防腐のため、囲炉裏(いろり)の火でヒノキの葉を燃やす形で従来から燻蒸を定期的に行っていた。ふるさと納税は寄付額1万円で、燻蒸体験と園内の畑で収穫された野菜を使ったランチやピクルスなどの土産品の3点が返礼品となる。
燻蒸体験は母屋の板の間に切られた囲炉裏に枝を並べ、古新聞に付けた火で着火して始まった。炎の中にヒノキの葉をくべると、たちまち白い煙がもうもうと上がり、屋内に煙が立ちこめ1メートル先も見えなくなった。着ていた服にも煙の臭いがしみつき、せきこむ人もいた。
一方、秩父宮さまは戦後の食糧難の時代に自給自足をと園内に農園を作った。この農園を復元した畑で里芋や大根、キャベツや白菜を栽培しており、ランチやピクルスは、この食材を生かしている。メニューは季節により変わるが、この日のランチは、しょうがの炊き込みご飯、大根の煮物、サツマイモやニンジンのピクルスだった。
記念公園の斎藤雅斗園長(36)は「畑の食材を食べることで当時の暮らしぶりが感じられる。御殿場は熊本と並ぶかやの産地。珍しい燻蒸体験を通じて、かやが守られていることを知ってほしい」と話した。【石川宏】
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