日本酒や焼酎、そして沖縄の泡盛といった「伝統的酒造り」が日本時間の5日、ユネスコの無形文化遺産に正式決定される見通しです。OTVでは4日から3日間、沖縄が誇る泡盛文化を特集します。初日は高温多湿の沖縄で先人たちが築き上げた黒麹による酒造りの手法や泡盛文化の継承に情熱を注いだ酒造所を取材しました。

祭りや伝統芸能などの保護を目的とするユネスコの無形文化遺産。県内ではこれまでに「組踊」や「宮古島のパーントゥ」が登録されていて、伝統的酒造りが正式決定されれば国内で23件目となります。

伝統的酒造りはカビの一種である麹菌を用いて日本酒や焼酎、泡盛などを造る技術で、米や麦を蒸す、こうじを作る、発酵させるといった過程が特徴です。杜氏や蔵人などが日本各地の気候風土に合わせて、経験に基づき築き上げてきました。

読谷村長浜に本社を構える比嘉酒造です。1948年、アメリカ民政府から酒造免許を取得し、第1号となる泡盛「まるたか」を世に送り出しました。

女性や泡盛が苦手な人にも美味しく飲める泡盛を造りたいという思いから試行錯誤を重ね現在の主力商品である「残波」が誕生しました。

今回特別に許可を得て、世界に認められた泡盛造りの工程を撮影させてもらいました。

泡盛の特徴の一つが原料となるタイ米です。ジャポニカ米と比べ、固くサラサラしていることから、麹が育ちやすく、泡盛の香りや味わいを引き出すのに適しています。

洗った米を蒸した後、泡盛造りには欠かせない「黒麹」の種麹を米にまんべんなくまぶし、米麹を造っていきます。温度管理をしながら、回転ドラムや円盤製麹機で40時間をかけて黒麹を育てます。

この段階で泡盛の発酵に必要な米のでんぷんが糖に変わり、泡盛の味や香りに関わる酵素が造られていきます。

永田裕介記者「出来上がった米麹は水と酵母が入ったこちらの発酵タンクに移されます、表面にブクブクと泡が立っていて発酵しているのがわかります。」

発酵タンクでは、アルコール発酵によりもろみが造られ、毎日攪拌作業を行いながら2週間程度、熟成させます。

比嘉酒造 宮里雄大さん「黒麹菌は他の麹菌よりもクエン酸がとても豊富ということで、高温多湿な沖縄でも雑菌の繁殖をすごく抑えてくれる効果があるので、沖縄の泡盛作りにとってはとても欠かせない良い麹だなと思っています。」

熟成したもろみを蒸留して誕生した風味豊かな泡盛は、その後、甕や貯蔵タンクでさらに熟成し、年月を重ねるほどに味わいはより芳醇なものとなっていきます。

比嘉酒造 泡盛シニアマイスター中村真紀さん「沖縄の方々や日本、世界の方々に泡盛の魅力を伝えて、本当に価値ある泡盛というのをこれを機に人類共通の宝にしていただいたので、それを世界に広めていきたいなというふうに思っています。」

600年以上の歴史を誇る泡盛。琉球王国時代、泡盛造りを許されていたのは「首里三箇」と呼ばれる崎山・赤田・鳥堀の3町に限られていました。

首里城のお膝元で王府が管轄しやすかったことに加えこの地域では泡盛造りに欠かせない水が豊富に湧き出ていました。

瑞泉酒造 佐久本武取締役「発祥の地で今も酒を造れるというのは大変誇りですよね。」

首里三箇の一つ、崎山町に蔵を構える瑞泉酒造です。首里城・瑞泉門の側にある湧き水の名にあやかり137年前の1887年に創業しました。

泡盛の無形文化遺産への登録について、佐久本武取締役は長い歴史の中で培ってきた高い技術が世に認められることを誇らしく感じています。

佐久本武取締役「黒麹菌の活用が高く評価されたのではないかと。蒸留して貯蔵して飲む酒の文化は、西のスコッチか東の泡盛かと言われているくらいですから、大変特異なものがある。」

79年前の沖縄戦では多くの酒造所が破壊され、泡盛造りの要・黒麹菌もそのほとんどが消滅したと見られていました。しかし、戦後50年以上経った1998年、戦前に瑞泉酒造と咲元酒造から採取されていた黒麹菌2株が東京大学に保存されていることが判明。

佐久本取締役も職人の一人として伝統の泡盛を復活させることに尽力し、翌1999年に戦前の黒麹菌による蒸留に成功しました。戦火をまぬがれた黒麹と現代の技術が掛け合わされ、幻の泡盛が誕生した瞬間でした。

佐久本武取締役「いろんな酒の種類が増えてきている。いい意味では切磋琢磨、狭い沖縄で牌を奪い合うのではなくて、県外・海外の比重が増えれば。少しキザですけど、『泡盛美味くして沖縄栄える』ような図式になればいいと思います。」

泡盛づくりの意思を受け継ぐ6代目の佐久本学社長。長い歳月をかけて味をつないでいける泡盛の魅力は世界にも受け入れられると確信しています。

佐久本学社長「泡盛には丸々寝かしながらというよりも、仕次ぎしながら、特に戦前は100年古酒や200年古酒があったと言われています。引き継いでいけるというのが一番の魅力ですので、そういうことが知ってもらえると泡盛が世界的にも続いていくのではないかなと思っています。」

琉球王国時代に生まれた泡盛造りの高い技術と深い味わい。戦火をくぐり抜け沖縄に根付いてきた伝統の泡盛の名が世界に轟きます。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。