「お扇子さえ持てれば舞台に立ち続けたい」と話す山村友五郎(右から2人目)を囲んで、右から長男の若、妹の光、次男の侃=大阪市浪速区

大阪を拠点に上方舞の文化を守り伝える「山村流」。六世宗家山村友五郎の還暦記念の「山村流 舞扇会」が5月3日、国立文楽劇場(大阪市中央区)で開かれる。のべ40人以上が出演、流儀の総力を結集した華やかな舞台となる。

「舞扇会」は友五郎が生まれた昭和39年に始まった。「僕自身、舞扇会と同い年。コロナ禍も一段落ということで、今年はうちの流儀のさまざまな面を知っていただきたいと、流儀で大切にしている曲から微力ながら僕が作った振り付けの作品まで多種多様な曲を並べました」

友五郎は妹の光(ひかり)とともに地唄舞「石橋(しゃっきょう)」(第1部)と、長男の若の狐忠信で、歌舞伎「義経千本桜」でも知られる「道行初音旅」の静御前を勤める。

「『石橋』は昭和48年の初舞台の折、光と共演した思い出深い曲。還暦を機に初心に立ち返る意味で勤めたい。『道行初音旅』はこれまで何度も狐忠信を踊ってきたが、今回は若にやらせて自分は初役で静を勤める」と友五郎。若は「力強く大きく踊ることができれば」と意気込む。

次男の侃(かん)は義太夫「仕丁」を勤める。友五郎家には明治期の歌舞伎役者、初代市川斎入が使用した「仕丁」の3つの面が残っており、その面を使って踊る。

山村流は江戸末期、上方歌舞伎の三代目中村歌右衛門の振付師として活躍した初代山村友五郎を祖に創流。井上流、楳茂都流、吉村流とともに「上方舞四流」と呼ばれ、大阪・ミナミを中心に上方舞の伝統を継承してきた。

友五郎は平成4年に宗家を継いで以来、初代の作り上げた歌舞伎舞踊も多く手掛けている。上方歌舞伎や文楽、OSK日本歌劇団、宝塚歌劇団の振り付けや演出を行うなど、上方の文化全体の隆盛にも力を尽くしてきたが、課題も挙げる。

「今は、昔の大阪の風物や上方の匂いのするものが私たちの日常から姿を消しつつある。それが分からないと上方舞は伝わりにくい。古き良き大阪の風景や生活感をどう伝えていけるかを考えていきたい」

舞扇会では大阪の座敷芸として知られる「南地大和屋へらへら踊り」、大阪の門付け芸をもとにしたユーモラスな舞踊「ちょろけん」なども上演する。山村流事務局(06-6761-4039)。(亀岡典子)

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