「一緒にアニメ作ろうぜ!」-。人気バンド「ヨルシカ」のライブツアーを演出するスクリーン映像として、いずれも那覇市出身のクリエイター2人が共同制作したアニメーションが使われ、6日と7日の東京公演を盛り上げた。那覇市在住の画家・なかんだかりたつろうさん(31)と、東京在住のフリーアニメーター・田仲生成(きなり)さん(30)は10年以上前、予備校時代に交わした約束を大舞台で果たした。(社会部・又吉嘉例)
(右)アニメに使われた自身のイラストに向き合う、なかんだかりたつろうさん=11日、那覇市内(左)アニメを制作する機器に向かう田仲生成さん=4月、東京の仕事場(提供)共に芸大を目指して那覇造形美術学院に通っていた予備校時代。2人は当時もアニメの設定やストーリーを話し合っていたが、制作には至らなかった。
なかんだかりさんは沖縄県立芸術大学を卒業後、画家や絵本作家として国内外で個展を開くなど活動している。繊細なタッチで幻想的な世界を表現する画風が持ち味だ。
一方、上京して専門学校でアニメ制作を学んだ田仲さん。映像系の会社で働きながらフリーのアニメ作家や動画編集者としてミュージックビデオやテレビアニメの制作に携わってきた。
ヨルシカのライブで流す5分のフルアニメを作ってほしい-。
今春、田仲さんにそんなオーダーが舞い込んだ。ヨルシカのコンポーザー、n‐buna(ナブナ)さんが生み出す文学的な楽曲と、ボーカルのsuis(スイ)さんの透き通るような歌声で魅了する人気バンド。「幻想的でふわっとしたタッチの絵」を想定した時、予備校以来の友人の作品が思い浮かんだ。
「たつろうの世界観で描いていいよ」。田仲さんから依頼を受けたなかんだかりさんは「こんな形で約束が実現するなんて激アツですよね。すごく気合が入った」と笑う。シカやフクロウなど動物たちのイラストを13カット。「描いている間はずっと楽しくて、自分でも好きな絵になった」
2人のコラボ作品は桜がテーマの人気曲「春泥棒」の演出で使われた。田仲さん制作のアニメでは、なかんだかりさんの動物たちが集まって空を飛ぶ。強いピンク色を使い、スクリーンが照明のように会場をピンクに染めることを狙った。
なかんだかりたつろうさんのイラストを基に田仲生成さんが制作したアニメの一部(ヨルシカLIVE2024「月と猫のダンス」春泥棒 より)「映像は観客の体験の一部になる。ライブに価値をプラスしたかった」と田仲さん。東京有明アリーナで2日間行われたライブは盛況に終わり、「アニメを見たn‐bunaさんも喜んでいたと聞きました」。
なかんだかりさんは「自分の絵を動かしてもらったことに感動した」とうれしそう。田仲さんは「予備校当時からなあなあになっていた約束だけど、それができる大人になったのかな」と感慨深げ。2人は「また一緒にしっかり時間をかけて、いい作品を創りたい」と再コラボを誓っていた。
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