2024年のノーベル文学賞を受賞したハン・ガン。REUTERS/Neil Hall

<アジア女性文学者初の受賞者は「今すぐスポットライトを浴びたくはない」と語った──>

2024年のノーベル文学賞を受賞した韓国の作家、ハン・ガン(漢江)。だが、彼女は他のノーベル賞受賞者のような記者会見などを行わず、いつもと同じようにひっそりと執筆活動を続けている。そんな彼女の元をスウェーデン公共放送が訪ね、受賞後初のインタビューを行った。韓国メディアEBS、ソウル新聞、ノーカットニュース、ニューシスなどが報じた。

「この賞が何を意味するのかを考える時間が必要です」

スウェーデン公共放送が13日に放送したインタビューは、ノーベル賞受賞直後の11〜12日にハン・ガンの自宅で行われたという。ハン·ガンは「10日の夕方、自宅で息子と夕食を食べていたところ、スウェーデン・アカデミーのマッツ・マルム氏から電話をもらいました。初めはいたずら電話だと思ったが、結局本当であることに気づいてびっくりしました」と語った。

また、受賞会見を行っていないことについて、なぜ祝わないのかと聞かれると「違います。息子と一緒にお茶を飲みながら祝った。お祝いしたかったのに、なぜそう思ったのですか?」と逆に質問した。記者が「あなたの父親(作家のハン・スンウォン)が記者たちに会った席で、『娘が世界の状況(ウクライナ戦争など)のために記者会見したくない』と話した」と説明すると、ハン·ガンは「何か混乱があったようです。その日の朝、父に電話した時、父は村の人々と大きな宴会をしようとしていたのですが、私はそれが良くないと思ったので『そんな大きな宴会はしないで』と言ったんです」と説明した。

そしてハン・ガンは「今すぐスポットライトを浴びたくはないです、私は静かにしていたい。世界に多くの苦痛があり、私たちはもう少し静かにしていなければなりません」として「それが私の考えで、(それで父に)宴会を開くなと言ったのでした」と付け加えた。

またハン・ガンは、ノーベル賞を受賞しても自分の創作は変わらないと語った。彼女は「文章を早く書く方ではなく、自分のペースで書き続けたいです。現在書いている小説を書き終えたらすぐ、ノーベル賞の受賞記念講演の内容を書き始めます」と新作の完成が間近いことを明らかにした。

新作エッセイ「羽」を発表

こうしたなか、ハン・ガンはノーベル賞受賞後初の新作としてエッセイ『羽』を発表した。

これは、彼女が同人として参加しているメルマガ形式のオンライン同人誌「毛玉」の15日夕方に発行された第3号に掲載された。900字を少し超えるこのエッセイでは、彼女は母方の祖母との思い出を振り返っている。


「ふと祖母を思う時、一番最初に思い浮かぶのは私を眺める顔だ。愛のこもった目でそっと私の顔をのぞき込み、手を伸ばして背中を軽くたたいた瞬間。その愛が実はあなたの一人娘に向けられたものだということを私は知っていた。そのように背中を軽くたたいた後は、いつも繰り返しおっしゃっていましたから。お母さんに本当に似ているね。目が全く同じだ」

デビュー作を発表した20代の頃のインタビュー

一方で、ハン・ガンが作家としてデビューしたばかりのころのインタビューが、ネットに掲載されて注目を集めている。

韓国の公共放送EBSは、ユーチューブチャンネル「EBS教養」に「ノーベル文学賞受賞者の20代の頃の旅行はどんな感性ですか。作家の小説「麗水(ヨス)の愛」の足跡を追って」というタイトルの動画を掲載した。

映像はハン・ガンが麗水港、突山島、南山洞など麗水のあちこちをめぐりながら「麗水の愛」をどうして書くようになったのか、どんな意味を持つのかを話す内容だ。『麗水の愛』は1995年に出版されたハン・ガンの短編集で、彼女の初の単行本だ。

彼女は小説を書くためにわざわざ麗水を訪ねてきたわけではなかった。たまたましばらく滞在した麗水で、彼女は強いインスピレーションを得たという。そして故郷の麗水を離れてソウルで暮らす二人の若い女性──故郷が果てしない懐かしさの対象である一人の女性と、果てしない傷として記憶する一人の女性を思い出し、二人をモチーフに「麗水の愛」を執筆したという。

ハン・ガンは、麗水が小説の中の背景になった理由について「麗水という名前のためだと言える。美しい水(麗水)と言って地元の名前になったり、旅人の愁いという抽象的な意味になったりもする。 それで麗水を選んだ」と語っている。

この20代のハン・ガンを取材した映像はユーチューブで人気急上昇動画となって注目された。 映像は公開15時間後の16日現在、再生数24万回を突破し、1200個以上のコメントが付けられている。

【動画】デビュー作を発表した頃のハン・ガン


20代のハン・ガンがデビュー作『麗水の愛』について、麗水港、突山島、南山洞など麗水のあちこちをめぐりながら語るインタビュー。 EBSClture / YouTube

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