那覇大綱挽本番の13日に、東の旗頭「東一番」を掲げた那覇市の新崎修徳さん(55)。1月に見つかったステージ4の膵臓(すいぞう)がんと闘いながら、各旗頭の代表が務める「綱方(つなほう)」として初めて大綱に乗り、東を勝利に導いた。「綱に登るまで死ねない、絶対に登ってやると自身を奮い立たせた。本当に報われた。感謝しかない」と涙を浮かべた。
新崎さんは中学の先輩に誘われ、16歳から牧志青年会で旗頭を掲げている。最初は嫌々だったが、一人で持てた時の感動が忘れられず、魅了されていった。今では3人の息子と練習に励んでいる。
今年1月、顔色が悪くなり、体重も30キロ近く激減して検査を受けると、がんは最も進行したステージ4で、肝臓に転移。医者から余命半年と宣告された。すぐに入院し、2回の手術と抗がん剤治療が始まった。副作用で体に力が入らない。髪の毛が抜け落ちる様子にも耐えられなかった。
自身を奮い立たせるきっかけになったのは、旗頭の先輩からラインで送られてきた本紙の記事。同じステージ4のがんを患いながら、ボディービルダーとして奮闘する又吉宏樹さんの活躍がつづられていた。旗頭歴約40年で初めて「綱方」にも任命され、「絶対に登ってやる」と熱が入った。
迎えた本番。上下左右に激しく動く大綱の上でぐっと踏ん張り、時折座り込みながらも、綱を引くように誘導する両腕は止まらなかった。開始から約6分で東に軍配が上がると、大粒の涙を浮かべながら家族や仲間たちと固く抱擁した。
新崎さんは「素晴らしい景色だ。40年の思いを込めた。生きて旗頭を続けたい」。新崎さんと東一番を掲げた長男の修作さん(28)は「綱方を務め上げた父は自慢で誇り」と笑顔を浮かべた。(社会部・玉城日向子)
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