WOWOWの映画プロデューサー、大瀧亮さん(39)が手がけた映画3本が今年上半期、連続ヒットした。1月公開の「ゴールデンカムイ」、5月の「ミッシング」、6月の「ディア・ファミリー」。そして10月、全9話のドラマ版「ゴールデンカムイ―北海道刺青囚人争奪編」の配信がWOWOWで始まった。
「仲間に恵まれた。映画は総合芸術。原作者、監督、脚本家、俳優さんら一芸に秀でた方々の最高のパフォーマンスをアシストすることが、凡人である自分の一芸だと思っている」
映画プロデューサーはどんな仕事をしているのか。
作品の企画、脚本の開発、配役を決めるキャスティング、予算を出資してもらう会社の募集。「脚本、キャスティングまでに何段階も壁を乗り越えなければならない」。撮影に入ると作品を監修し、編集に立ち会う。「全体を見渡し、現場スタッフと向き合う。みなが満足できる環境をつくり、より良い作品に仕上げることを常に考える」。作品完成後は製作費を回収する手腕が問われる。宣伝、販売営業、DVD化、海外への売り込みもする。
「愛がないと映画は作れない。愛があるからこそ、巣立った後もしっかり並走し、面倒をみる。作品を子どものような感覚で見ている」と話す。
舞鶴市立城南中学校、府立西舞鶴高校のバスケットボール部で、上級生からキャプテンに指名された。決してさぼらない献身性、忍耐力があった。「チームをまとめ上げることを真摯(しんし)に、一生懸命考える性格が育った」。母校での経験が作品作りに生かされている。
上京して進学した大学で法律を専攻、公務員を目標にした。だが、東京でカルチャーショックを受ける。「こんなにエンターテインメントが近くにある。間近でタレントや俳優さんを見る機会がある。映画館がこんなにあるんだ。こんなに映画の選択肢があるんだ」。映画を見あさり、エンタメ業界に進む決意をした。
自分にもできる、と考えた仕事がタレントのマネジャーだ。「黒衣としてタレントをスターダムにのし上げる。人の人生を背負う。人の話を聞き、場の空気を読む。自分の性格に合っていると思った」。ホリプロに入社し、俳優の藤原竜也さんのマネジャーを8年間務めた。映画、ドラマ、演劇などの現場で作品に触れる中、プロデューサーが輝いて見えた。2015年にWOWOWに転職、映画プロデューサーになった。
「プロデューサーは作品のマネジャー。産声を上げる前からプランニングして、世に出すために手塩にかけて育て、世に出してからも育てていく」。アシスタントプロデューサーとして2年間経験を積んだ。「想像以上に仕事が多岐に渡ることを知った。プロデューサーはこんなに大変な仕事をしているんだと、目からうろこだった」という。
舞鶴市に1938(昭和13)年に開業した舞鶴八千代館という映画館がある。「原体験は八千代館で映画を見たこと。小さいころに父親に連れて行ってもらったことを鮮明に覚えている。特別な空間での映像体験だった」と思い起こす。
プロデュースした作品を多くの人が見てくれる。「スクリーンの2時間の体験だけでなく、映画館に向かうワクワクする道中、見終わった後の帰りにあれがおもしろかった、これがおもしろかったと語り合える時間。そんな2時間以上の価値になる作品を世に送り出せるよう、映画作りに向き合いたい」【庭田学】
おおたき・りょう
1985年、舞鶴市生まれ。創価大法学部卒。2007年ホリプロ入社、15年にWOWOWへ。プロデューサーとしてのデビュー作は「友罪」(18年)。妻も映画関連会社に勤務する。小4と3歳の男児2人。東京都渋谷区在住。
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