ハン・ガンさん

 2024年のノーベル文学賞は。現代韓国文学を代表する作家、ハン・ガンさんが受賞しました。ハン・ガンさんは2024年5月、日本の最新邦訳の出版を受けて、オンラインイベントに参加しました。イベントの様子を再掲します。(24年5月20日夕刊掲載)

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 ハン・ガンさんの「別れを告げない」(斎藤真理子さん訳、白水社)は韓国現代史の悲劇「済州島4・3事件」をモチーフにしている。同書の刊行を記念したオンライン・トークイベントが14日、開かれ、ハン・ガンさんがソウルから創作の背景などを語った。

 「過去や他者、死者と共に生きている人を描きたかった。これは愛に関する小説。人は愛する人がそばにいなくても祈ることができる。超自然的に書くことになりました」

 『別れを告げない』は作家と映像作家、映像作家の母親の3人の女性が主に登場する。雪や鳥といった繊細で象徴的なイメージが重なり、各人が持つ痛みが哀悼に連なっていく。「軽くて柔らかいものを通じて、事件の中に入りたいという思いがあった」と述べた。

 「4・3事件」は1948年、米軍政下の済州島で、南北分断に抵抗した武装蜂起への武力弾圧。3万人以上の島民が虐殺されたといわれる。過去にハン・ガンさんは『少年が来る』(井手俊作さん訳、クオン)で、光州で起きた民主化抗争「光州事件」(80年)をテーマにした。「二つの小説はつながっている。『少年が来る』も苦痛を通過して愛に向かう小説だったが、今回はより愛に焦点が当てられた作品だと思っている」と話した。『別れを告げない』は、仏文学賞のメディシス賞とエミール・ギメアジア文学賞を受賞している。【棚部秀行】

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