天草市在住のマンガ家・天海夏矩(あまみ・なつのり)さん、24歳。小学館から隔週で発行される『ビッグコミックスペリオール』で9月、初めての連載がスタートしました。作品に込めた思いを聞きました。

(天草市河浦町の仕事場)
マンガ家・天海夏矩さん、24歳。天草市在住です。(本名・大山夏音)

【天海 夏矩さん】
「ずっと美術をやっていたから、マンガの絵はやっぱり違うなと思って、マンガとして見やすい絵とか言葉と一緒で情報というかそういう面もあるから、どうやったら見やすくなるかとか勘をつかむのがすごく難しくて。小学五年生とか六年生の時に初めて漫画を読んで、ある日、少女マンガを初めて読んだ時にすごくはまってしまって、絵もすごくきれいですよね、男の子も女の子も。そのキャラクターをまねして描くようになって、その流れで中学生の時、初めてマンガを描いて、という感じです」
(内容は?)
「ちっちゃい男の子が金魚を飼ってるんですけど、それを唐揚げにして食べるかどうか、すごく悩む話なんです(笑)」

高校受験のため、いったんマンガを描くことは中断しました。県立第二高校美術科を経て、1浪し、東京の武蔵野美術大学に進学。しかし、2年で中退して天草に帰ってきました。

【天海 夏矩さん】
「帰ってきて、仕事がないから(運転)免許も持ってないし、一人で移動もできない環境なので、どうしようと思って、マンガを描いて。今はメールとかで(編集部に作品の)持ち込みができる。それでいくつか持ち込みをして、新人賞に応募しました」
(内容は)
「高校が美術科で美大受験を経験したので、すごく貧乏で勉強もできない。でも絵だけが好きな男の子と、勉強もできるし、家もそこそこ裕福で絵もそれなりに描けるけど、自分の行きたい所には行けないと思っているような対照的な2人のキャラクター、高校生が友達になる話」

去年2月に発表された『ビッグコミックスペリオール第二回次世代新人マンガ大賞』。天海さんはこの『春の炭』で準大賞にあたる入選を受賞しました。

【小学館 ビッグコミックスペリオール編集部 一宮 大介さん】
「すごく才能のある新人だと編集部で認知されまして。話のテーマだったりとか、セリフの選び方だったりとか、年齢を聞いたらすごく若かったんですけど、とても作品は大人びていて、年齢よりもずっと大人の考えを持っている。それが一番、可能性を感じたところでした。その後、読み切りをまず描いていただいて、それもすごく力のこもった読み切りだったので、これから新人さんをどんどん発掘していきたいという流れもあって、だったら今、誰で(連載を)やるべきかといったら、天海さんじゃないかと編集長が判断されて決まりました」

天海さんは9月下旬スタートの新連載を任されることになりました。全7話の短期集中連載です。

【天海 夏矩さん】
「『地蔵癒(なお)し』というんですけど、地蔵さんのお世話をして、全国フラフラと旅しているお坊さんが主人公です。その土地、出会ったお地蔵さん、出会った人、何かドラマがあって…お地蔵さんって『地蔵辞典』が出るくらい全国にいっぱいあるんです。ここまで細分化しているものって世界の仏教圏でも珍しくて、お地蔵さんのバリエーションがあるなら、1話目をこの地蔵で、次はこういう地蔵さんというふうにしていけるなと思って」

コマ割りをして、セリフを入れた「ネーム」と呼ばれるマンガ設計図となるものを描き、編集者と相談して修整し、作画に入ります。

【天海 夏矩さん】
「(出来上がっているのは)1話だけ。やばいんですよ」
「すみませんね、忙しいときに」

子どもの頃からいろいろなことを想像して楽しんでいたといいます。

【天海夏矩さん】
「一人で遊んでる方が好きだったし、絵を描く方が好きだったし、くるくる回りながら何かを想像して」
(くるくる回りながら?)
「庭とかで一人でいいなぁと思って満足みたいな。寂しいと思うようになったのはもうちょっと大きくなってから。中学校とか。なんか『あれ?』みたいな、あまりなじめない雰囲気を感じ始めたので(さびしいと思う)時期はありました」

内気だった幼い頃に芽生えた、マンガが好きという気持ち。今、それを生きる糧として向き合っています。

【天海 夏矩さん】
「人がどういう気持ちで動いているとか、人が人をこんなふうに思って、こういう行動をしたとか、そこから一コマ、パンッと出てきたときの『いいんだよ、これが!』みたいなものが紙に出てきた時、楽しみというかうれしいなと思います」

【母・真記さん】
「(『漫画家になりたい』と言った時)内心『ええ!』と思ったんですけど、大丈夫なのかなって。でも、この子がやりたいことをやってもらいたいというのは小さい時からあったので、体調崩さないのかなとか心配ばっかりしてますけど、頑張れと応援するしかないので」

これまで商業誌に読み切り作品が4本掲載され、連載はまだまだ先の話だと思っていたそうですが、突然の抜擢にまだ、戸惑いもあります。

天海夏矩さんの初めての連載『地蔵癒(なお)し』の第1話です。

【天海 夏矩さん】
「お米を作っているおじいちゃんと主人公の若然が出会う話で、無農薬でお米を育てることにすごくこだわっているおじいちゃんなんですけど、そのおじいちゃんが抱える問題と若然が向き合っていくお話です」

【小学館 ビッグコミックスペリオール編集部 一宮 大介さん】
「どこかで見た漫画を描いてほしくない。『天海夏矩先生だな、この漫画は』と思われるように、個性を伸ばしてほしいと思います」

【天海 夏矩さん】
「箱というか、包装紙というか、そういうものが多分、マンガの目に見える部分だと思うんです。言葉だけじゃ足りない、気持ちみたいなのがあると思うので、紙に目に見えるものになって、それを別の人が読んで同じ気持ちになったらすごい、そうなったらいいなと思います。いい包装紙で巻いて、いいものを届けられるようになりたいです」

マンガ家・天海 夏矩さん。今、天草から届けたい思いをペンに込めて奮闘中です。

『地蔵癒(なお)し』第1話はインターネットでも読むことができます。第2話の掲載誌は10月11日・金曜発売です。

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