将棋の藤井聡太王座(22)の8冠独占を許した屈辱を晴らそうと、永瀬拓矢九段(31)が挑戦者として帰ってきた。第72期王座戦五番勝負(日本経済新聞社主催)開幕前日の3日、第1局の対局地となる神奈川県秦野市で両対局者の記者会見があった。
藤井王座が8冠達成を懸けて臨んだ前期五番勝負は、永瀬九段優勢の時間帯が長く、藤井王座が逆転に次ぐ逆転で辛くも制した。今期も永瀬九段がリードしてリベンジを果たすか、藤井王座が7冠の貫禄を見せて初防衛するか。注目のタイトル戦が始まる。
藤井王座は前期五番勝負以降、竜王、王将、棋王、名人を防衛したが、叡王戦で伊藤匠叡王(21)にフルセットの末に敗れ、8冠の一角を崩された。しかしその後、棋聖、王位を防衛し、永世棋聖と永世王位の資格を獲得して強さを維持している。
対局を前に、藤井王座は「前期は内容としては全体を通してかなり押されていた。この1年で成長できたところを少しでも出すことができればという気持ちは持っている。永瀬九段の序盤の研究や見識の深さは警戒すべきポイントになる」と語り、1年間の成長を盤上で見せると誓った。
一方、永瀬九段は王座失冠後、2024年2月の朝日杯将棋オープン決勝で藤井王座を破って優勝し、「借りは33%返せた」と発言。叡王戦で挑戦まであと1勝に迫るなど他棋戦でも活躍を続けている。
大一番を翌日に控え、永瀬九段は「ゼロからスタートするという気持ち。挑戦が決まってから藤井王座との対局をどんな時も考えることが多かった」と振り返った。「前期は精神的に未熟で、『本番は練習のように、練習は本番のように』という基本ができていなかった。技術面だけで足し切れないところを精神的な部分で足し、能力として向上した」と、残りの“借り”を返すべくメンタル面を強化してきたことを明かした。【丸山進】
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