偽物の可能性が浮上した「自転車乗り」(徳島県立近代美術館提供)

 天才贋作(がんさく)師にしてやられたかも――。徳島県立近代美術館(徳島市)は12日、27日から開催予定だった所蔵作品展について、油彩画1点の展示を取りやめると発表した。1998年度に公費6720万円を費やして購入した「名画」なのに、表に出せなくなった訳とは……。

 問題になっているのは、「所蔵作品展2024年度Ⅱ 時をめぐる表現」で展示を予定していたフランスのキュビズム画家、ジャン・メッツアンジェ(1883~1956年)が11~12年に制作したとされる「自転車乗り」(縦55センチ、横46センチ)。98年度に国内の画商から鑑定書付きで購入し、これまでに複数回、展示してきた。

 ところが、6月初め、外部から情報提供があり、天才贋作師と言われるドイツ人、ヴォルフガング・ベルトラッキ氏の“作品”を紹介したネット記事に「自転車乗り」と酷似した絵画が写っていた。このため、美術館所蔵の「自転車乗り」について偽物の疑いが浮上した。ネット記事は約10年前のものといい、現時点で偽物と断定していないが、可能性があることから展示の取りやめを決めた。

 現在は納入した画商に詳しい調査を求めているほか、フランスで権威ある作品総目録編集を編集している組織に調査の協力を求めているという。

 美術館の担当者は「購入以来、大事な作品として展示したり、活用したりしてきたのでショックを受けている。もし偽物なら悔しいし、申し訳ない気持ちです」と話している。【植松晃一】

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