バレーボールの魅力とは何か、より伝えていくためにどうすればいいのか――。元男子日本代表主将の柳田将洋選手(31)=東京グレートベアーズ=らが2日、東京都内で行われた日本バレーボール協会主催のイベントに登壇し、語った。

男子日本代表の強さのワケは……

 「今、バレーボールがすごく盛り上がっていて、これからバレーをやろうと志す若い選手がたくさんいるんじゃないかなと予想している」。このタイミングだからこそ、多くの人に伝えられることがある。柳田選手の口調は熱かった。

トークイベントでバレーボールの魅力を熱く語る柳田将洋選手(左)=東京都渋谷区で2024年4月2日午後3時10分、森野俊撮影

 イベントは協会が新エンブレムや日本代表の新ユニホームの発表と合わせて開催した。柳田選手のほか、協会の川合俊一会長(61)や元女子日本代表でオリンピック4度出場の荒木絵里香さん(39)らも参加し、「つなぐ力を世界に育む」をテーマにトークを展開した。

 バレーの魅力に話題が及ぶと、荒木さんは同じ人が続けてボールを触れないというルールがあり、「つなぐスポーツ」だと強調した。学生時代からエースを担ってきた柳田選手も「つなぐ」気持ちの大切さに賛同した。

 「自分ばかりがボールを触ろうとすると、結果的に勝てない試合が増える。誰かを思いやってボールを渡したり、つないだりすると、あうんの呼吸が少しずつできてくる。バレーは人と人が通じ合う」

 ここがバレーの難しさでもあり、楽しさでもあるという。

 「チームメートがどうしたいんだろうというところに目を向けた方がいい。『この人は自分のことを考えてくれているんだ。自分もこの人のために頑張ろう』という関係が生まれる。すると、チームが強くなるし、その人自身の強さにもつながる。それが顕著に表れる競技」

 さらにポジションごとで求められる資質もある。柳田選手が務めるアウトサイドヒッターは、勝負どころでトスが集まるポジションだ。

トークイベントで笑顔を見せる柳田将洋選手(中央)と荒木絵里香さん(左)=東京都渋谷区で2024年4月2日午後3時6分、森野俊撮影

 「負けず嫌いな選手が活躍するイメージがある。(試合終盤の)20点以降で(スパイクを打つため、セッターに対して)球を呼ぶ選手は一緒にやっていても頼りになるし、結果にもつながる」

 一方、トスを上げる役割のセッターは「サポートしてくれたり、苦しいところで踏ん張ってくれたり」と、アタッカー以上に細かい気遣いが求められるという。

 柳田選手自身、ジャンプが普段より低い時、セッターから「今日(調子)どう?」などと聞かれるそうだ。「やっぱり、自分はいつもと違う(と確認できる)。『ちょっとこうしてほしい』とゲーム中に修正している」と経験を語った。

 バレーはボールを持つことができないため、ラリー中は考える間もなく状況が変化していく競技だ。

 「トスからスパイク、ブロックのフォローと次の動作にどんどん移行していく。(チーム内で)共通意識を持っていないと、遅れていってしまう。今の日本は次のプレーに入るスピードがものすごく速く、世界より優位に立っている」と、現在世界ランキング4位に位置する男子日本代表の強みを分析した。

「『人気がある。だから、いい……』じゃない」

 ここ数年、男子を中心にバレー人気は高まっている。より多くのファンを獲得するためにどうすればいいのか。

 「一人一人の選手が今まで以上に自分自身の発信力を意識することが大事。選手の発信に対し、ファンの人が(関心を持つきっかけ)だったり、社会課題を解決する何かが見つかったり、企業と協力して先に進める目的が見つかったりすると思う」

トークイベントでバレーボールの魅力を語る柳田将洋選手(右から2人目)、荒木絵里香さん(同3人目)、川合俊一・日本バレーボール協会会長(同4人目)ら=東京都渋谷区で2024年4月2日午後2時57分、森野俊撮影

 続けて理想のアスリート像も語った。

 「アスリートは社会にどれだけ貢献できるかが最終的に重要。そこに行きつくと、バレーをやっていて良かった、バレーをサポートして良かったという人も出てくる。そういった関係をこれから大きくしていければいい」

 バレー界の今後について、最後にこう語った。

 「若い子たちが将来やっていて良かったと思えるバレー界にしたい。バレーボールを職業とする人、みんなが幸せになれる環境にしていくことが大事。現役の僕も絶対できることがあるし、バレー界全員がよくしていく気持ちがあれば、実現する。『人気がある。だから、いい……』じゃない。そこに頼らないような活動、行動をしていきたい」

 柳田選手の力強い誓いが多くの関係者に届けば、思い描いた未来に近づいていく。【森野俊】

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