パリオリンピックに出場した選手たちは4年後に向けてスタートしています。松岡修造さんは「パリ五輪の結果だけ見た時、光と影を最も感じたのは体操でした」といいます。
体操男子団体金メダルは、まさに光でした。岡慎之助選手(21)というニュースターが生まれました。一方、つらい経験も…。そして今、自分自身の体操と向き合っているのが橋本大輝選手(23)です。今回、橋本選手が心の声をさらけ出してくれました。
■団体での鉄棒演技「録画は1ミリも見ていない」
橋本大輝選手は、今年はとてつもないプレッシャーと戦い続けた1年でした。
橋本大輝 この記事の写真 橋本選手「正直ぶっちゃけた話ですけど、パリ五輪の目標を聞かれた時に、何回も『金メダル』と言うのが嫌だった。毎回『金メダル』と言うたびに、変な感情になってきちゃって」
そんななか、シーズンを締めくくる大会で、“人生最高”の演技を見せたのです。鉄棒の離れ技を次々に決め、見守る仲間たちも大興奮です。それもそのはず、技の難しさを示すDスコアはパリ五輪と比べても自己最高です。失敗すれば優勝を逃すリスクもあるなか、あえて挑戦をしたのです。
橋本選手「やっぱり見るものすべて、見てくれるものすべてに『やっぱ橋本大輝だな』と思わせるなら、想像を超える力が必要かなと思っている」 松岡さん
「パリ五輪は橋本大輝だったんですか?」 団体金メダルをもたらした鉄棒の演技について 橋本選手
「全然違かったですね。家帰って録画したやつは絶対に見ないですね、今。1ミリも見ていないです」 パリ五輪 体操男子団体 決勝
橋本選手が1ミリも見ていない演技とは、なんと2大会ぶりの団体金メダルをもたらした鉄棒の演技。1番プレッシャーがかかる最終演技者としてやり切りましたが、なぜ見ようとしないのでしょうか。
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■けがによる練習不足の不安が…「恐怖」へ■けがによる練習不足の不安が…「恐怖」へ
ネガティブな怖さ 橋本選手「映像を見ると、その時の感情がよみがえってきて体操が怖くなっちゃう。なんかブルブル震えちゃって。その感情を思い出すのが怖い」 松岡さん
「怖さはネガティブな感覚なんですか?」 橋本選手
「ネガティブですね。今まではプレッシャーがかかろうと、緊張感があろうと、練習量でカバーしてきて自信をつけられるんですよね。パリ五輪は、けがが一番大きい。思い通りにいかないですし、痛みがない状態で演技できるのか、いろいろな不安と戦いながら、悪化させないためにも練習量を制限しないといけない。やりたいことができないのが一番きつい」 けがによる練習不足の不安が…「恐怖」へ
大会前に負った右手中指のけがで思うように準備ができない。練習不足が不安を生み、恐怖へと変わっていきました。
その影響は大きく、種目別の鉄棒では予選でミス。決勝にすら進めず。個人総合でもミスが生まれて6位でした。
岡慎之助期待されていた3冠を成し遂げたのは、奇しくも後輩の岡慎之助選手でした。岡選手が個人総合で金メダルを決めた時の橋本選手の涙する姿は印象的でした。
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■「人生は“後出しじゃんけん”が最強」■「人生は“後出しじゃんけん”が最強」
松岡さん「心をえぐるような質問だと思ったらスルーしてください。個人総合連覇をできると思っていたけど達成できなかった。あとは、金メダルは岡慎之助選手。そういうのをどうやって受け入れているのかなと思って」 五輪は自分にとってどうだったんだ考えた結果 橋本選手
「先ほどからインタビューされていて、いろんな感情が出て何を考えているか分からないくらい、次なんて言うか自分でも考えているんですけど。やっぱり帰ってきてからすごい悩んだというか。五輪は自分にとってどうだったんだってすごい考えていた時に自分が思うように練習すればいいんだなっていうのは終わってから思いました」 松岡さん
「自分と向き合って、五輪で何を見つけたんでしょう」 橋本選手
「答えが見つからないんですよね。1つの諦めを見つけなきゃいけないのかなと思っている。それは良い意味で諦めるというか吹っ切れる。引きずらないことが一番なのかなと思っている」
パリ五輪を振り返ると、いまだに心の整理ができていない。そんななかでも何とか前を向こうとしている橋本選手の強い思いを感じます。
松岡さん「視聴者の人も悩んだり、自分が思うようにいかないことがあると思うんですよ」 「歩み続けることが必要」 橋本選手
「視聴者の方に言うのであれば、人生は“後出しじゃんけん”が最強ってことを覚えてほしくて」 松岡さん
「後出しじゃんけん?」 橋本選手
「ロサンゼルス五輪(’28)とブリスベン五輪(’32)で金メダル取れたら、『パリの失敗が良かった』と、2回勝てる。1回負けても、“後出しじゃんけん”で勝ちにつながると思う。1回落ちるけど、次はふり幅が大きくなると思う。成長していくためにとにかく歩み続ける、途中休憩するけど歩み続けることが必要なのかなと思います」
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■インタビューを通して感じた変化■インタビューを通して感じた変化
インタビューを振り返り 松岡さん「大輝さんは本当に赤裸々に語ってくれたなと思います。話していて、彼がどんどん変わっていく姿を僕は感じた。パリ五輪のことを振り返っていく時にグッと言葉に詰まったり、苦しい、つらい表情をしているんです。ただ、そのなかで自分の心の声があるわけですね。それを振り返って言語化していく。それによってちょっとずつ彼は明るくなっていく。最後には、ロサンゼルスだけじゃなくてブリスベンという8年後の五輪の言葉まで出したわけです。もちろん答えは出ていないと思います。ただ彼自身が向き合っていくとか、闘っていく姿を見守りたいなとすごく思いました」 大越健介キャスター
「同時に日本のエースとしての矜持(きょうじ)みたいなものを聞いていて感じましたよね。最後は人生後出しじゃんけんなんだと。落ちる時があるから次は勝つんだという、そこら辺の強さはインタビューの中で引き出された言葉だと思いました」 松岡さん
「金メダルの選手もいろいろな思い、つらいところがあるんでしょうね。でも、僕が言えることは1つ。大きく輝け」
(「報道ステーション」2024年12月16日放送分より)
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