◯ヴィッセル神戸3―0湘南ベルマーレ●(8日・ノエビアスタジアム神戸)
神戸の前に出る迫力はすさまじかった。ゴールを目指して最短距離で、どんどん進む。目の前の障壁を物ともしない豪胆さは、闘牛のようだった。
3チームによる覇権争い。神戸は引き分け以下でも優勝の可能性があったが、MF武藤嘉紀は「勝つしかないというメンタルを頭にすり込んだ」と試合開始直後からシュートを浴びせた。
前半26分、DF酒井高徳が右サイドから中央へクロスを送り、武藤が頭で合わせた。これは相手GKにはじかれるも、詰めていたFW宮代大聖が無人のゴールへ蹴り込み、先制点を挙げた。
昨季のリーグ初制覇を経て、多くのチームが「対神戸」の守備を敷いてきた。低く設定された最終ラインには時に5枚の守備者を配し、ゴール前を固める。FW大迫勇也には2人のマークを付け、得点源を封じようとしてきた。
そこで異彩を放ったのが新加入の宮代の存在だ。昨季、川崎で8得点した宮代は2トップの一角だけではなく、ウイングなどさまざまなポジションで起用され、戦術の幅を広げた。先制点の場面では、右サイドに開いた大迫が酒井にボールを預け、ペナルティーエリア内に進入。その動きに湘南の守備者がつられたことで、武藤へのマークが外れた。「どこからでも点が取れるチームができた」と大迫。得点者の宮代を含め、神戸の攻撃の進化を示す象徴的なシーンとなった。
補強による豊富な戦力を持ち、過密日程の中で大胆な選手の入れ替えも実施した。それでも「強度の高いサッカー」は揺らがなかった。それは大迫、武藤ら経験ある選手が妥協なく、チームメートを「追い込んだ」からだ。武藤は「僕らは仲良しこよしでやっているわけではない」と言う。緩みが見られれば、激しい言葉で指摘し合う。新戦力との融合は大きな幹があったからこそだ。
夏の国際親善試合を除けば今季の公式戦53試合目でたどり着いたリーグの頂上。吉田孝行監督は「全員がやるべきことをやってくれた」。その景色は去年よりもさらに壮観なものだった。【生野貴紀】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。