聴覚障害者の国際スポーツ大会「東京2025デフリンピック」が来年11月に開催されるのを前に、サッカー競技が行われるJヴィレッジ(福島県楢葉町、広野町)で17日、開催1年前のカウントダウンフェスタ「デフスポふくしま」が開かれた。会場ではデフサッカー日本代表候補選手らが登場し、「熱量たっぷりのジェスチャーで応援して盛り上げて」と訴えた。
大会は来年11月15~26日の日程で、陸上、水泳など21競技が行われ、このうちサッカーはJヴィレッジが会場となる。この日はデフサッカーやデフ卓球の体験コーナーや、手話体験のコーナーなどが用意された。
聴覚障害者の感じている世界が疑似体験できるゴーグルを準備したイベント会社の映像制作担当、牧村正嗣さん(51)は「聴覚障害は、全く聞こえない、少しだけ聞こえる、特定の周波数だけ聞こえるなど、まちまち。デフリンピックが、多様な聴覚障害者が対等に暮らせる社会となるきっかけになれば」と期待した。
手話体験コーナーでは、手話パンフレットなどを配ってPRしていた福島県聴覚障害者協会の吉田正勝会長(66)が「県内で手話言語条例を制定している市町村はまだ3分の1。手話を必要としている人が大勢いるという事実を知ってもらいたい」と話していた。
特設ステージでは、手話通訳士の保科隼希(としき)さんが講演し「野球の審判のアウト、セーフは聴覚障害者の大リーガーのために作られ、それが大観衆でも分かりやすいジェスチャーとして定着した。普通だと思っていたことが、相手にとっては普通ではないかもしれない。お互いに尊重しあえる社会になるといい」と訴えた。
この後、サッカー女子日本代表「なでしこジャパン」元代表の岩渕真奈さん▽デフサッカー女子日本代表候補の岩渕亜依選手▽保科さん――らのトークイベントがあった。
岩渕真奈さんが、海外での生活の経験から「言葉が通じなくても積極的に仲間に飛び込んでいくことで絆ができた」と言うと、保科さんが「手話も、分からないからといって遠慮するのではなく、とりあえず使ってみるという気持ちが大事だ」と話した。
岩渕亜依選手は「たくさんの観客がいると自分も背負っている思いが強くなる。『がんばれ』という手話も思いをストレートに熱量のあるジェスチャーで表現してくれるとうれしい」と、大きな身ぶりで訴えかけた。イベントの最後には女子代表候補の西戸(にしど)湖乃華(このか)選手=福島市=らも加わって記念写真に納まり、大会をPRした。【柿沼秀行】
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