[TOUR DE OKINAWA]
国内最大級のサイクルスポーツの祭典「第36回ツール・ド・おきなわ2024」が9、10の両日、本島北部地域を主な舞台に開催される。今回は名護を起点に1泊2日で国頭-那覇を巡る「本島一周サイクリング」が5年ぶりに復活するなど、昨年を3種目上回る27種目に3081人がエントリー、秋のやんばる路を銀輪で駆け抜ける。主催はツール・ド・おきなわ協会と北部広域市町村圏事務組合。沖縄タイムス社などが特別協力する。
沖縄選抜、上位入賞狙う チャンピオンロードレース200キロ
国際自転車競技連合(UCI)公認の男子チャンピオンロードレース(200キロ)に「沖縄選抜」が出場する。メンバーは、県自転車競技連盟が選抜した5人。選抜として出場経験もある監督の渡久地臣直さん(27)は「エースを上位に押し上げ、23歳以下で選ばれる新人賞を狙う。一人一人が一つでも順位を上げることも目標だ」と県勢の健闘を誓った。
沖縄選抜の持ち味と本番での戦略を話す監督の渡久地臣直さん=4日、浦添市牧港同レースには国内11チーム、海外から6チームの計17チーム85人が出場する。沖縄選抜の選手が上位3位に入賞したことはなく、期待がかかる。
メンバーのうち、日本大学4年の佐藤光さん(22)が唯一のプロ。社会人のグレゴリー・ブラウンさん(38)も実業団でプロのレースに出場している。日本体育大学4年の玉城翔太さん(22)、ホビーレーサーの石川裕彬さん(31)のほか、県自転車競技連盟と姉妹協定を結ぶ台湾の「台湾96自転車協会」からツン・ギーウェイさん(19)も参戦する。
佐藤光さん(本人提供)レースの狙いは、エースの佐藤さんをチームで上位に押し上げること。プロツアーで上位入賞する実力を持つ佐藤さん。渡久地さんは「上りが得意。きつい坂でも、集団から飛び出して引き離す『逃げを打てる』粘り強さがある」と評価する。
佐藤さん、サブエースのブラウンさんが先頭集団に食らいつき、玉城さん、石川さん、ツンさんの3人が集団後方にいるチームカーからボトルを受け取る補給役を担う方針という。
5人は、大会2日前の8日に初顔合わせして、最終調整に入る。佐藤さんは「10位圏内に入ることが第一目標。メンバーに的確な指示を出して勝利を勝ち取りたい」と意気込んだ。
エースを務める佐藤光さん(本人提供)ブラウンさんは「光が3位以内に入るチャンスをつくりたい」と話し、8月に病気で入院し復帰戦となる玉城さんは「佐藤が走りやすい位置で走らせる」。石川さんは「優勝に絡む選手のサポートはもちろん、個人でも上を狙っていきたい」と見据えた。(北部報道部・比嘉海人)
一輪車大会「子どもの励み」 運営の名護市スポーツ推進委員
一輪車大会の運営を担う名護市スポーツ推進委員=10月31日、名護市中央公民館ツール・ド・おきなわの関連イベントで、今年30回目を迎える9日の一輪車大会を運営する。
一輪車は現在は学童保育などが中心だが、北部地域では小規模校で盛んに行われていたという。だが成果を披露する場がなく、地域のスポーツ指導などに当たる名護市スポーツ推進委員の働きかけでツールド大会に取り込んでもらった。
大城修会長(64)は「子どもたちのイベントといってもきちんとした競技。タイムは計るし順位も出す」と話す。それが子どもたちの励みになっているという。
「中には何度も落車してべそをかきながら走る子もいる。それでもゴールまで自分の力で走り抜くことがその子のためと我慢しながら見守っているんです」
普段はスポーツ教室のほか、駅伝大会のような地域イベントの指導や運営に関わっている。ただ少子化でこうしたイベントは縮小傾向で、委員数も20人の定員に対し現在12人。「人数を増やし、一輪車以外も盛り上げたい」と翁長久美子副会長(68)は語る。
「一輪車は乗るだけでも大変。その過程を考えつつ子どもたちの頑張りを見てもらえたら」と大城会長は話した。(北部報道部・前田高敬)
風光明媚 コース楽しんで 渡具知武豊大会会長
選手を激励する大会会長の渡具知武豊名護市長=1日、名護市役所ツール・ド・おきなわ大会会長の渡具知武豊名護市長に、大会の特徴や魅力を聞いた。
-大会の特徴は。
「北部12市町村の事業として1989年から続き、今大会は第36回の開催となる。北部一円を舞台に、今年は27種目が開催され、3081人がペダルをこぐ。今年は沖縄本島を2日間かけて走破する『沖縄本島一周サイクリング』も実施する」
-競技レベルは。
「ツール・ド・おきなわは『ホビーレーサーの甲子園』といわれるほど、競技レベルが高い。市民レーサーの中にはこの大会に合わせて他の大会で調子を合わせる人もいる。市民レースで距離が最長の200キロの部では200人の応募枠が応募開始からわずか7分で埋まるほど、人気がある」
-安全対策は。
「北部地区医師会病院が中心となり、災害医療の考え方を生かした医療体制システムを構築している。北部地域の医療体制に負担がかからないよう、大会中に起きた事故などは大会の医療チームで対応する」
-選手の皆さんに一言。
「風光明媚(めいび)なやんばるのコースを楽しみつつ、これまでの練習の成果やチームワークをいかんなく発揮して頑張ってほしい」(北部報道部・松田駿太)
若いチーム 成長の舞台 アペックスレーシングCC(那覇)
大会に向け気合を入れるアペックスレーシングCCのメンバーたち=3日、名護市・21世紀の森公園4年前つくられた若いチームだ。那覇市壺屋で自転車修理・整備専門店「ル・ヴェロ・アペックス」を営む宮城翔(かける)さん(27)が代表を務める。
20代を中心に小学生なども含む45人で構成。今回の大会は学校のイベントなどと重なり十数人の参加にとどまるが、若いだけに今大会のような大きなレースで競いたいとの思いが強いチームという。
性能を追求すれば数百万円にもなる本格的なロードレーサーは若者にはハードルが高い。若手を応援したいという宮城さんの思いもあり自転車店としては珍しくネット通販を勧めたり学割を適用したりして若いメンバーを支えている。
17歳の時、バイトに入ったスポーツ店で関わった小学生がどんどん記録を伸ばすのを目の当たりにし「育てる楽しさ」を実感した。自分も成長していく感覚が面白く「沖縄から世界へ通じるプロを出したい」と思うようになった。自転車を中高年だけのスポーツにしてはいつか廃れていくという思いもあった。
23歳で独立したのを機にチームを結成。人気マンガ「弱虫ペダル」を機に自転車にはまりチームに加入したという玉城義基さん(25)は「よっしーサイクリング」名で1万人超の登録者を持つユーチューバー。今回市民レース200キロに初挑戦する玉城さんは「とにかく速く走ってみたい。スピード感を楽しみたい」と開幕を待ちきれない。
チーム最高齢で宮城さんの父親の宮城達さん(59)は「これまで8位くらいにとどまっていたから、今度はもう少し上に」と負けず嫌いぶりをのぞかせる。
今回はけがのため大会の専属メカニックとして参加する宮城翔さんは「落車などの危険もある競技だけにしっかり整備し安全面から支えたい」と抱負を語った。(北部報道部・前田高敬)
風を切って走る姿表現 大会ポスター 並木風磨さん
2024年の大会ポスター第36回ツール・ド・おきなわのポスターは、東京都羽村市の美術家・イラストレーターの並木風磨さん(38)の作品が選ばれた。
並木さんは第28回大会に続いて2回目の選出。「レーサーのダイナミックな動きが、うまく伝わったのかなと思う」と受賞を喜んだ。
並木風磨さん作品は、力いっぱいペダルを踏む選手が風を切って走る様子が描かれている。赤や黄色といった鮮やかな色合いを使うことで、シンプルに沖縄らしさを表現。選手がまとう風は、ゴールを目指す熱量も表しているという。
並木さんは「スピード感や、選手の身体性が伝わる作品にしたかった」と振り返る。ロードバイクが趣味で、時間があればおよそ100キロを走って汗を流すという並木さん。「いつかツール・ド・おきなわを家族で観戦してみたい」と語る。
水分補給しながらやんばる路を駆け上がる選手たち=2023年11月、国頭村・普久川ダム付近今回の大会について「選手の皆さんは日ごろの練習の成果を存分に発揮してほしい。観客もそんな選手の応援を楽しんで」と呼びかけた。(東京報道部・照屋剛志)
選手や観戦者 全力サポート ボランティア・名桜大硬式野球部
大会運営ボランティアとして、やる気をみなぎらせる名桜大学硬式野球部ナイン=3日、名護市・同大学ツール・ド・おきなわの大会運営ボランティアとして名桜大学硬式野球部員20人が参加する。メイン会場内で、受け付けや案内、選手をスタート地点に並べる補助、看板設置のほか、大会終了後の後片付けなどを担当する。主将の青山浩晟(こうせい)さん(20)=捕手=は「明るく真面目でタフな部員がそろっている。選手たちが、気持ち良く最高の力を発揮できるようにサポート頑張ります」と意気込む。
ボランティア3年目の小嶋哲平さん(21)=一塁手=は「国内最大規模の自転車の祭典に、チームメートと一緒に携わらせていただき感謝しています。いい仕事っぷりを見せて、名桜大硬式野球部のチームワークをアピールします」と力を込めた。
沿道から応援する地域住民ら=2023年11月、国頭村奥平岡楓大(ふうた)さん(19)=投手=は「大会には、国内外のトップ選手たちだけではなく、たくさんの観戦者も訪れてくれる。おもてなしの心で役目を果たします」と笑顔で話した。
名桜大硬式野球部は10年ほど前から、大会の運営ボランティアに参加している。監督の宮城圭吾さん(35)は「地域貢献活動を通し、部員がさまざまな人と交流できる機会。名護市の一大スポーツイベントを楽しみながら盛り上げてほしい」と期待した。(北部報道部・下地広也)
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