11月3日、「東北・みやぎ復興マラソン」が開催され、約1万人のランナーが東日本大震災の被災地を駆け抜けました。今年も、ランナー、ボランティア、さまざまな人たちの思いが詰まった大会となりました。

さわやかな秋晴れのマラソン日和。全国47都道府県と海外から約1万人のランナーが集まりました。

広島から参加したランナー
「地震災害のことを忘れずに復興に向けて考えながらやっていくため、意義のある大会だと思う」
宮城出身で山形から参加したランナー
「道路とかも変わっていて、復興を肌で感じながら走りたいと思う」

ランナーの一人、向坂駿さんは今回、初めての参加。初のフルマラソン挑戦です。

向坂 駿さん
「少し緊張しています」

向坂さんは、この春、警察学校に入ったばかりの18歳。震災当時は5歳。救助活動を行う警察官や機動隊員の姿にあこがれて、警察官を志しました。

向坂 駿さん
「自分も家族や親族の方、被災して苦しい状況であるにも関わらず、被災した方々を救助するという任務についている姿がとても強い存在だなと」

目標だった警察官としての第一歩を踏み出した今年、苦手意識からこれまで避けていた「走る」ということに挑戦したいと思い、今回の出場を決意しました。

向坂 駿さん
「警察学校に入って走る機会も増えて、自分でもさまざまなことに積極的にチャレンジしていこうというふうに決めていたので、走っている過程で非常に苦しいと思うんですけれど、それを乗り越えたということが、これから先、警察人生で苦しいこと、辛いことがあっても、それを乗り越える糧になるんではないかと思います」

そして…午前9時10分、向坂さんも警察学校の同期たちとともにスタートを切りました。東北・みやぎ復興マラソンは、東日本大震災の被災地復興に寄与することを目的に2017年にスタートした、東北最大級のマラソン大会。台風やコロナ禍での中止を経て、今年が4回目の開催です。ランナーたちを後押しするのは2500人以上にのぼるボランティアたち。エイドステーションでは東日本大震災を経験した人たちが中心となって、被災地の特産品をランナーに手渡します。

エイドボランティア「がんばれー!」

「復興」の名を冠する大会として、今年は、能登半島地震と4月に台湾で発生した地震への支援も行ないました。宮城野区岡田の東部復興道路にあるエイドステーションでは、石川県の会社が製造する「しおサイダー」が振る舞われました。使われている塩は奥能登地域に伝わる「揚げ浜式製塩法」で作られた希少な海水塩です。

ランナーは
「うまい!おいしいです!」「3杯目です。めっちゃ、うまいです」

手渡すのはこの岡田地区で被災した人たち。

宮城野区岡田で被災したボランティア
「すばらしいランナーへの贈り物だと思うね。我々も震災の時にいろいろな支援もらったから能登の人たちにも少しでも感謝の気持ちが届けばいいんじゃないかな」

岩沼市の千年希望の丘相野釜公園では、多くのランナーが足を止め、鎮魂の祈りを捧げました。この場所で、特別な思いでランナーたちにエールを送る団体がいました。

群馬県みどり市で開催している東日本大震災の復興イベント「みどりサマーフェスタ」のメンバーです。震災直後の2011年、群馬でいち早く復興イベントを立ち上げ、募金を集めるなど千年希望の丘プロジェクトを支援し続けてきました。

みどりサマーフェスタ主催者 遠藤佳世子さん
「2011年の当時からずっとこの公園を見続けてきましたので、ものすごく感慨深い気持ちでいっぱいです。やっぱり(パフォーマンスにも)力が入りますね」

メンバーの中に東日本大震災で被災した人はいませんが、震災を他人事にしないという気持ちで、これからも活動を続けたいと話します。

みどりサマーフェスタ主催者 遠藤佳世子さん
「私たちの役目は忘れないということで、細々とですが続けていけたらなって改めて思います」

たくさんの声援に後押しを受け、それぞれの思いを持って被災地を駆け抜けたランナーたち。

宮城出身で東京から参加したランナー
「何も変わらないところと変わっている景色を見てすごくいい経験ができた。来てくれてありがとうとか、また来てねとかすごく温かいメッセージがあって、すごくほっこりしたし、力になりました」
石川県から参加したランナー
「能登の方がまだまだ復興進んでいないと言われていますので、あと何年かかるかわからないんですけれども、この東北・みやぎ復興マラソンのコースみたいに、宮城県が復興したみたいに能登も復興していければと思います」

向坂さんも、スタートから5時間10分、警察学校の同期たちとともに無事にゴールしました。

向坂 駿さん
「復興に関連した施設とか千年希望の丘とか走って、私たちが走ることで何か力になっているのかなということを感じました。警察官として復興の名を冠するマラソンを走るということで、被災地の方々のことを考えることができたりとか、苦しい時に頑張れるということができたので、これからの警察人生でも生かすことができるんじゃないかと思います」

ランナー、ボランティア、沿道に駆け付けた人たち。それぞれの思いが、発生から13年が経った被災地を駆け抜けました。

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