悲願のJ1昇格を果たした清水エスパルス。次に見据えるのはJ2優勝で、タイトル獲得となれば2001年の天皇杯以来だ。今シーズンからクラブの広報に就任した元守護神のレジェンド・西部洋平さんも、自身が選手時代に果たせなかったJ2優勝へ特別な想いを抱いている。
元守護神が「広報」でクラブ復帰
2024年10月27日アウェーの栃木戦に勝ち、J1昇格を決めた清水エスパルス。
ついにつかんだ歓喜の瞬間に、エスパルスの広報は仕事を忘れ感情を抑えることができなかった。
清水エスパルス広報・西部洋平さん:
(広報になってから)インタビューは初めてかもしれない。変な緊張感があります、久々に
西部洋平さん(43)はカメラを向けると試合中とはうって変わって穏やかな表情になった。
かつてのエスパルスを支えた守護神はいま、新たな立場でチームを支えている。
相棒だったキーパーグローブをスマートフォンに変えて、愛着のある古巣エスパルスで今シーズンからクラブの広報を託された。
ファン・サポーターへの情報発信やメディア対応などが主な仕事だ。
清水エスパルス広報・西部洋平さん:
選手の近くにいられるのは非常に大きくて、その熱というか引退してその感覚はなかなか味わえるものではないと感じていたので。選手と同じくらいの熱量で仕事ができるのは、今の僕の立場の、広報の魅力かな
プロキャリアの半分 12年間は清水
リーグ戦の出場は実に395試合。24年間のプロキャリアのうち、半分を占める12年間をエスパルスで過ごしたレジェンドだ。
エスパルスがクラブ史上初めてJ2で戦うことになった2016年の新体制発表会見で6年ぶりに復帰し西部選手は、「J2に戻るのはすごく勇気のいる決断だったが、清水の力になりたいと思い決断した」と復帰の理由を語った。
シーズン中はケガで戦列を離れる時期もあったが、副キャプテンとしてチームを牽引。
中盤は流れに乗り切れない状況を打破しようと1年でのJ1昇格には欠かせなかった選手だけでの“青空ミーティング”を呼びかけた。
さらに2019年の天皇杯、ジュビロ磐田との静岡ダービーで見せた怒涛の連続PKストップは今も語り草だ。
キャリアの晩年となった2021年からはJ3・カターレ富山に活躍の場を移したものの、静岡県内でのキャンプの際には「静岡でのキャンプは非常に充実しています、やっぱり好きです」と笑っていた。
出身は兵庫県だが静岡・清水は第2の故郷で、2年連続でJ2を戦う古巣の危機に導かれたのも必然だったのかもしれない。
ケガから復帰の後輩に感動
今シーズンで一番熱くなったシーンを尋ねると第32節の藤枝MYFC戦を上げた。
清水エスパルス広報・西部洋平さん:
藤枝戦ですかね、やはり(西澤)健太のこれまでっていうところの…。僕も選手として(西澤選手と)一緒にやっていますし、何かあったら「洋平さん聞いてくださいよ」と言ってくれる選手の1人なので、いろいろこみ上げてくるものがあって、感動を越えて涙も出るくらいうれしかった
9月の藤枝戦で4カ月ぶりにピッチに帰ってきた西澤健太 選手。
鎖骨骨折の大ケガを乗り越え、完全復活を印象付ける1ゴール・1アシストは選手と広報と立場は違うが共に戦う仲間として心を打たれるものがあった。
その試合は秋葉忠宏 監督も「やはり健太の想いとか、サポーター・ファミリーの想いが、彼に乗り移ってああいうプレーをしたと思う」と試合後のインタビューで涙を流した。
優勝で“王国・清水” 復活の足掛かりに
現役時代と変わらない熱き思いを秘めたルーキー広報はJ2の厳しさを知るレジェンドでもある。
清水エスパルス広報・西部洋平さん:
簡単にはJ2で優勝できないですし、シャーレを掲げる経験は選手にとってすごい財産。僕がやっぱりそれができなかったので味わったことがないが、それを味わった選手は多分 一回りも二回りもパワーアップできる。優勝したら「こんな景色が見られるんだ」とみんな喜ぶと思う。優勝してシャーレを(北川)航也、監督、いろんな選手が持っている姿を見たい
自身が選手としてつかめなかった“優勝”の2文字が、“サッカー王国・清水”復活の足掛かりとなることを信じている。
清水エスパルスは11月3日にホームでいわきFCと対戦する。この試合に勝ち、現在2位の横浜FCが引き分けか敗れれば、最終節を残し初のJ2優勝が決まる
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