レスリングの非五輪階級の世界選手権(アルバニア)に出場した女子代表が1日、成田空港に帰国し、2016年リオデジャネイロ、21年東京の両五輪金メダリストで、59キロ級を制した金城梨紗子(サントリー)は「また一番高いところに上がれたのがうれしかった」と喜びを語った。  22年5月に長女を出産し、日本レスリング界では初めて産後に世界一となった。「その日、その日で何が最善かを考えながら過ごしてきた」と育児と練習の両立を振り返った。今後も練習を継続して次戦を検討する。

非五輪階級の世界選手権を制し、金メダルを手に持つ(右から)金城梨紗子、清岡もえ、石井亜海=1日、成田空港で(山内晴信撮影)

 パリ五輪男子フリースタイル65キロ級金メダルの清岡幸大郎(三恵海運)の妹で、55キロ級優勝の清岡もえと、23歳以下の世界選手権との連戦をこなし、72キロ級で頂点に立った石井亜海(いずれも育英大)も、晴れやかな表情で金メダルを掲げた。    ◇

◆2022年5月に長女を出産 走るとかつてないほど息が上がった

 手にした金メダルの輝きは、2度の五輪制覇のときに勝るとも劣らない。金城は「自分が積み重ねてきたことが、このためにあったのかなと思うと本当にうれしい」。日本レスリング界で初めて、産後に世界一まで登り詰めた。

非五輪階級の世界選手権を制し、金メダルを手に持つ金城梨紗子=1日、成田空港で(山内晴信撮影)

 「ここ数カ月、東京五輪のときに近い感覚でできていた」と動きのキレを取り戻していた。今大会、モンゴル選手との決勝でも軽快だった。勝負の分かれ目となった得点シーン。相手のタックルをかわすと、流れるように背後を奪ってマットにはわせた。  2022年5月に長女を産んだ直後、走るとかつてないほど息が上がった。練習中に帝王切開の傷痕が痛んだこともある。体重制限があり、減量も求められる競技。以前のように「レスリング漬け」の日々は送れない。体形を戻して闘いの舞台に戻る姿を思い描けず、「無理かも」と諦めかけたことは数知れない。

◆「娘が最近、サンタさんの存在を知った」から年末は欠場

 パリ五輪出場は逃した。今月21日で30歳。同世代が第一線を退く中、歩み続けたのは「娘に『自分が生まれてママが弱くなった』と思わせたくない」から。育児のかたわらで、福井県敦賀市の自宅と東京を行き来してスパーリングを重ね、ときには午前4時から走り込んで体をつくった。  今後も練習は続ける。ただ、年末恒例の全日本選手権は欠場することにした。「娘が最近、サンタさんの存在を知ったので、家でクリスマスを楽しませてあげたい」。子を思う母の柔和な笑みを浮かべて言った。(山内晴信) 

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。