【日本-韓国】後半、追加点を決めて喜ぶ谷川萌々子選手=国立競技場で2024年10月26日、藤井達也撮影

 パリ・オリンピック後の初戦を代行監督という異例の形で迎えたサッカー女子日本代表「なでしこジャパン」で、注目の若手が“日本デビュー戦”で強烈なインパクトを残した。19歳の谷川萌々子(ももこ)選手。なでしこの顔として長年活躍した澤穂希さんをほうふつとさせるスケール感が漂い、近い将来、サッカーファン以外にも名前が知れ渡るかもしれない。

 「きょうは攻撃の方で手応えがあったと思います」

 そう自己評価した試合が、東京・国立競技場で26日にあった国際親善試合の韓国戦だ。後半開始から起用され、中盤の守備的なボランチの位置に入ると、わずか11分後にゴールネットを揺らした。

【日本-韓国】後半、追加点を決める谷川萌々子選手=国立競技場で2024年10月26日、藤井達也撮影

 右サイドからパスを受けると前にいた味方に預け、自身はグイグイと前線に駆け上がる。ボールを持った右サイドバックの守屋都弥(みやび)選手に向かって2度、左手を上げてパスを要求し、右からのクロスに右足でダイレクトに合わせ、ゴール右隅にシュートを突き刺した。

 「みやびさんにボールが入った時に自分がフリーだと思った。しっかり決めることができて良かったなって思います」

 4―0で快勝した試合で勝利を決定付ける4点目。昨年11月に代表戦に初出場し、過去に出場した7試合はすべて海外開催だっただけに、日本での代表初戦に自ら花を添えた格好だ。

 サッカーファンは既に大きな期待を抱いている。今夏のパリ五輪のブラジル戦では、0―1と敗色濃厚だった終盤に投入されるとPKを獲得し、同点の舞台を整えた。さらにその数分後、相手のパスミスにダイレクトで右足を振り抜き、約30メートルのロングシュートを決めて劇的勝利をもたらした。

重なるイメージ

 魅力は得点感覚と縦への推進力だ。身長168センチで日本選手としては長身で、キック力もある。この日、代行監督を務めた日本サッカー協会(JFA)の佐々木則夫・女子委員長が代表監督時代にボランチで起用され、抜群の得点力を備えていた澤さんとイメージが重なる。

 谷川選手は今回の韓国戦でセットプレーのキッカーも務めた。後半44分の右CKでは、いったん左足で蹴るそぶりを見せた後、GKの位置を見て右足で蹴るなど、左右ともしっかりと扱える。

 その精度を聞くと「ロングキックやシュートによって変わってくるんですけど、右足が6で左足が4とかですね」とのことだった。だが、自信がない方の左足で、2022年のU17(17歳以下)W杯(ワールドカップ)のスペイン戦で強烈なミドルシュートを決めている。

 SNS(ネット交流サービス)では「澤の再来か」などと期待は高まる。一方で、現在の代表で主力の長谷川唯選手(マンチェスター・シティー)や長野風花選手(リバプール)らの運動量、攻撃の組み立てやボール奪取などと比べれば課題も多い。

 名古屋市出身で、18年にJFAのエリート選手育成機関、JFAアカデミー福島で6年過ごした。その後は国内の女子プロリーグのWEリーグを経由することなく、24年1月にドイツの強豪バイエルン・ミュンヘンに加入した。出場機会を得るため、レンタル移籍先のスウェーデンのローセンゴードでプレーしている。

 3年後の27年にブラジルで開催されるW杯、28年ロサンゼルス五輪で主軸となる意識については「そういう思いもだんだん増えてきて、まだまだ結果は残していないですけど、これからもっともっと残していきたい」と語った。

 佐々木代行監督は、20歳前後の若手が質の高いプレーをしていることを踏まえ、「今後の3、4年についても非常に可能性のある、なでしこジャパンになり得ると思っています」と期待感を示している。【江連能弘】

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