[第38回NAHAマラソン]
12月1日開催の「第38回NAHAマラソン」開催まで残り約1カ月。完走に向けたコース攻略法や食事について聞いた他、NAHAマラソンを支えるボランティア団体を紹介する。(社会部・末吉未空)
ブレイクスルーランニングクラブ コースの難所と攻略法を解説してくれたブレイクスルーランニングクラブの(左から)武野麻衣子さん、東江那津さん、浜田清美さん=20日、糸満市名城/div>3難所 攻略法解説
ブレイクスルーランニングクラブ
マラソン初心者も経験者も、完走を目指すにはコースの特徴を押さえるのが重要だ。42.195キロの難所や攻略法を「ブレイクスルーランニングクラブ」に所属する3人のランナーに解説してもらった。
心身まだ余裕 熱中症警戒
第1の難所・津嘉山バイパス付近
国道507号の津嘉山バイパスの緩やかな坂■一般ランナーの武野麻衣子さん(47)
完走するには1キロ7~8分のペースが目安となる。スタートしたばかりは出場者が密集しているため走りにくいが、人を避けようとジグザグに追い抜くと疲労がたまる。前が詰まっている場合は無理に追い越さず、ゆっくりと後に続きながら進んだ方が疲れをためることなく前半を乗り切れる。
第1の難所は国道507号の南風原町・津嘉山バイパス。緩やかな坂が続く、コース最初の難関ポイントだ。まだ前半で精神的に余裕があり、「そこまで喉が渇いていないから」と油断すると熱中症になる危険性がある。昨年はコースの途中で一気に大量の水を飲み、おなかが痛くなった。前半だからと過信せず、少量の水を小まめに取るよう意識してほしい。
坂は前かがみで 歩きも可
第2の難所・平和祈念公園までの坂
平和祈念公園まで約3キロ続く上り坂/div>■11回完走の実績がある一般ランナーの浜田清美さん(57)
第2の難所は、平和祈念公園まで続く約3キロの坂。中間地点まで残りわずかという所で現れる最大の上り坂を攻略するには、坂と体がなるべく平行になるように前かがみで走るといい。止まってしまうと再び走り出す時に足が重く感じるため、きつくなったら歩いてもいいから進み続けて。
平和祈念公園を過ぎた糸満市名城では、きれいな海を一望できる。この海を見るために頑張ろうといつも思うが、名城周辺は下り坂になっているため、脚に負担がかかる。スピードを出し過ぎないように注意が必要だ。
疲労蓄積 塩分と水が大事
第3の難所・琉球ガラス村周辺
琉球ガラス村あたりから延々と続く一直線の道■第20回大会女子の部で優勝した競技ランナーの東江那津さん(46)
ひめゆりの塔を過ぎた琉球ガラス村あたりからは、日陰のない一直線の道が続く。沿道からの応援が一気に減り、景色が単調なため、精神的にも疲れやすい第3の難所だ。脚がつって倒れている人も多く見かける。クリアできるよう、塔を過ぎるまでには十分な給水、塩分の摂取が求められる。脚がつるのを防ぐため、ミネラルが豊富な塩を袋に入れて持っておくのもいい。給水所の前で塩を摂取し、その後水で流し込むと効果的だ。
その他に注意したいのが後半の小禄バイパス。道の一部がでこぼこで、走りづらい所がある。後半で疲れもたまっているので、足を取られないよう気を付けて。周りに惑わされず自分のペースで完走を目指してほしい。
給水に全力 完走後押し
昭薬付の中高生有志 中間地点でエール
出場者を支える昭和薬科大付属高校の(前列左から)赤嶺厚太さん、兼島侑大さん、前川航輝さん、眞喜屋仁さん、(後列左から)林田華凛さん、中村咲音さん、上地実咲さん=21日、浦添市・同校昭和薬科大付属の中高生有志は、2022年から中間地点の平和祈念公園で給水ボランティアを担っている。今年は50人が出場者を支える。
野球部で高校1年の前川航輝さん(15)は「昨年もボランティアでジョガーを応援し、場を盛り上げる楽しさややりがいを感じた」と今年も参加を決めた。「野球を通して応援のありがたさに気付いた。昭薬付校は勉強のイメージが強いが、勉強以外のこともできると見せつけたい」と意気込んだ。
同1年の眞喜屋仁さん(15)は「昨年もジョガーから感謝の言葉をもらい、逆に励まされた。自分もNAHAマラソンをつくる一員だと実感したので、今年も頑張る」と述べた。
初めて給水に携わる同2年の林田華凛さん(17)は「五輪で活躍する日本代表選手の姿を見て、一つのことに打ち込む人々の力になりたいと思った」のがきっかけ。「水を渡すのは一瞬のことだけど、後半も頑張れるよう応援したい」と語った。
サッカー部マネジャーで同2年の中村咲音さん(17)は、これまでは母と沿道で出場者を応援してきた。今年は部員ら10人が出場する。「完走できるように中間地点で元気を与えたい」と話した。
同1年の赤嶺厚太さん(15)が参加を決めたのは小中学生の時に出場したウオーキング大会で水をもらい、励まされたことがきっかけ。「差し入れをくれた人のおかげで、きつい場面も乗り越えられた。ジョガーの気持ちに寄り添い、思いを込めて水を渡したい」と笑顔を見せた。
沿道の美味 お楽しみに
ひめゆり観光センターでいご 沖縄そばやおにぎり千食提供
千食分の沖縄そばとおにぎりを提供するひめゆり観光センターでいごの山田裕司支配人(前列中央)と従業員=16日、糸満市米須糸満市米須の「ひめゆり観光センターでいご」は第1回大会から沿道での応援と差し入れを続け、沖縄そばやおにぎり千食分を提供し続けている。支配人の山田裕司さん(80)は「大会を盛り上げ、平和について考えるきっかけにしてほしい」と願う。
大会当日は早朝から従業員が準備に取りかかる。到着が遅れそうなジョガーから「沖縄そばを残しておいて」と電話を受けたこともあり、中間地点までたどり着いた出場者の楽しみとなっている。
過去には従業員の家族や孫も応援に駆け付けた。「幼い子どもが沖縄そばやおにぎりを配るとその場が笑顔であふれ、疲れていたランナーの顔も明るくなる。私たち自身が楽しむことで、出場者の皆さんを楽しませたい」と語る。
大会が近づくと「今年もそろそろ終わりか」と年の瀬を感じさせる。「普段は経営のことも考えないといけないが、この日はみんなで明るく過ごしたい」と笑みを浮かべた。
平和祈念公園を通るNAHAマラソンのコース周辺には、多くの戦跡がある。出場をきっかけに後日、ひめゆりの塔を訪れる人もいるという。
山田さんがでいごで働き始めて15年。「戦後80年がたてば沖縄戦がどんどん忘れられてしまうのではないか」と語る。「NAHAマラソンと平和を考える結び付きが大切。ここを通りかかったら、ひめゆりの塔やひめゆり観光センター駐車場の近くにあるでいごの塔にも手を合わせてほしい」と呼びかけた。
日々の食事バランス重要
大城ちか子さんに考案してもらったバランスメニュー。玄米(左下)、具だくさんみそ汁(右下)、野菜たっぷりレバニラ炒め(中央)、クイックサラダ(左上)、カットフルーツのヨーグルトかけ(大城さん提供)日本スポーツ協公認スポーツ栄養士 大城ちか子さん
琉球大学病院栄養管理部の大城ちか子副部長NAHAマラソンに向けて「食事での体調管理も大事」と推奨するのは、琉球大学病院栄養管理部副部長の大城ちか子さん(52)。県内で初めて日本スポーツ協会の公認スポーツ栄養士に認定され、県スポーツ協会スポーツ医・科学委員会栄養部会部長として、県内の高校チームや指導者に講演会や栄養サポートを行っている。今からでも意識すると良い食事方法について、助言してもらった。(聞き手=社会部・勝浦大輔)
一番大事なことは、食事で日頃からバランス良く栄養を取り、体調管理につなげること。ご飯、野菜、肉や魚、サラダなど基本的な食事を日々心がけたい。ハードなトレーニング、季節の変わり目などは体調を崩しやすいので、マラソンに向けてだけではなく、一般の人にも効果的だ。
疲労回復のポイントとして、料理では鉄分やビタミンが豊富なレバーとビタミンCたっぷりのニラを合わせた「レバニラ炒め」がお薦めだ。トレーニング後30分以内に素早く糖質中心の捕食を摂取し、使ったエネルギーを補うことも大切。練習直後で固形物を口にしづらいという人は、液体やゼリータイプのものでもいい。プロテインの場合は、糖質がしっかり入っているタイプのものを選ぶと良い。
レース3日前は練習量も落としている時期。この頃からの食事はエネルギーを蓄えるため、ご飯やパン、麺などの主食を中心に糖質を多めに取ること、ビタミンCを含む果物、豚肉や牛乳、納豆などに含まれるビタミンB群も必要になる。油物は控え、食物繊維も取り過ぎると消化不良になる恐れがある。消化の良いものを各人に合わせて取ってほしい。お酒もほどほどに。
当日はゼリータイプ、おにぎりなどの簡単なものでいいので、レース開始3~4時間前に済ませる。前日の夕食前後の間食などで少しずつ蓄えておくのも一つの手だ。
レース中は水分補給が最も大事だが、水分も日常から取ることを意識すると良い。元々の体の水分量が少ないと、当日の脱水症状も起きやすい。体の水分量が少ないと尿の色が濃くなるので、参考にしてほしい。
NAHAマラソン コースマップ
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