特集は、長野県松本市唯一のバッティングセンターについてです。30年に渡って市民に親しまれてきましたが、客足が減り、今、経営難に陥っています。6年前、経営を受け継いだ現在のオーナーは、かつて頻繁に通っていた野球少年。思い出の場所を何とか存続させたいと広く支援を募ることにしました。

■今年で33年目 開業から22球・300円

「オ、ーナイス」

ボールを打つ軽快な音が響いています。

松本市の「村井バッティングセンター」。1991年にオープンし、今年で33年目です。


マシンは昔ながらのバネ式。

料金は開業からずっと「22球・300円」のまま。

常連客は親しみを込めて「むらいのバッセン」と呼んでいます。


■多くの市民が練習や息抜きに

熱心にバットを振るのは、中学2年生の野球部員。

野球部員(中2):
「球速が豊富で、しかも設備もいろいろなものがあるのでおもしろいです。今週土曜日に新人戦があり、そこで県大会に行くために来ています。ヒットを打って、チームの勝利に貢献します。頑張ります」

多くの市民が練習や息抜きに利用してきました。


■元球児の代表「ここは野球人生の礎」

運営会社の代表・松田正和さん(45)もかつて練習で通っていた一人。

高校時代は野球部で4番を務め、高校通算15本のホームランを放つスラッガーでした。


運営会社・松田正和代表:
「中学生くらいから通っていますけど、ここで練習することによってライバルに差をつけようみたいな気持ちで来ていたので『野球人生の礎』と言えば、大げさかもしれないですけど、そういう場所です」


■「思い出の場所を守りたい」

前のオーナーが高齢となり後継者を探しているという話を聞きつけ、2018年、会社の事業の一つとして引き継ぎました。

少子化や野球人口の減少でかつて市内に3つあったバッティングセンターは既に1カ所だけとなっていました。

運営会社・松田正和代表:
「松本平の多くの野球愛好者がたくさん足しげく通った場所ですし、そういう場所をなくしてしまうというのは、寂しい思いをする方が多いと思ったので、その思いだけで引き継いだ」


■利用者「なくならないで」

市内から訪れたこちらの親子は2年ほど前から通っています。

父親(2022年の初来店時):
「よしよし、いい感じだ、当たれば行くぜ」
「おー、前行った、ショートゴロ」


息子は今、小学6年生。

父親:
「おー、ナイスバッティング」

少年野球チームに所属していてこの日は、10月末に迫った小学校最後の大会に向けて練習にやってきました。

息子(小6):
「楽しくボールを打てて、気持ちがいいです。勝って、優勝して、あとは楽しく終わりたい」

父親(40代):
「ここで練習したかいは、試合には出ていると思うので、来たかいはあると思います。松本ではここしかないですからね、バッティングセンター、なくならないでほしい」


■コロナ禍 大きな打撃

今も根強い支持がある「むらいのバッセン」ですが、実は松田さんが引き継いだ当初から赤字続き。別事業の収益で補填し、運営してきました。

状況が悪化したのはコロナ禍の期間です。

2020年の一斉休校の際は中学校や高校の野球部員の来店が増え、一時的に売り上げが伸びました。

しかし、その後は外出自体が減って2020年の売り上げは前の年から200万円減り、大きな打撃を受けました。


さらにー

松田正和代表:
「別事業の方も、ものすごくコロナの影響が出てしまい、(収益を)他の事業でカバーする形だったんですけど、それがコロナ禍で厳しくなったというのはありました」

ここ1、2年は物価高の影響で維持費が膨らみ、マシンやネットの老朽化で修繕費もかさんでいます。

「バッセン」は存続の危機に。

■CFで支援を募る

野球部員(中2):
「ずっと通っているバッティングセンターなので、なくなるのはちょっと悲しいかなと思います」

市内の男性(40代):
「松本周辺にバッティングセンターがなくなってきてしまったので、頑張ってやってもらいたい。みんなで支えていきたいなという感じ。なんかできることがあれば協力してきたい」


常連客からも存続を願う声が上がる中、松田さんは10月10日から「クラウドファンディング」で支援を募っています。

目標金額は100万円。施設の維持・修繕に役立てる予定です。寄付にはオリジナルグッズなどの「リターン」が用意されています。


運営会社・松田正和代表:
「松本平の野球愛好家にとっては、言い方は大げさかもしれないんですけど、聖地のような存在であると思いますので。共感していただける方に、寄付という形でいただきたいというのはもちろんなんですけど、このバッティングセンターに来ていただくことがとてつもなく大きな支援に繋がりますので、そういったものにつながっていければいいなという思いは強いです」

子どもたちの成長を支え、思い出を育んできた「バッセン」。

松田さんは存続に理解を求めています。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。