ライバルの強さを支えていたのは、記録に現れないずる賢い駆け引きの数々だった。  J1初参戦のFC町田ゼルビアがサンフレッチェ広島に0-2で完敗した9月28日の首位攻防戦。町田を気落ちさせた前半の2失点目は、リーグ優勝3度を誇る強豪のしたたかさが引き立つシーンだった。

◆昌子「広島だったら蹴らせていない」

 前半23分、ピッチ中央付近で広島のアルスランを倒してファウルと判定された場面。すぐに再開を試みるアルスランに対し、守備の陣形が整っていない町田は近くにいた呉世勲(オ・セフン)が再開を遅らせようと進路をふさいだ。だが、欧州で経験を積んだドイツ出身FWにかいくぐられ、左サイドに展開されてしまう。約10秒後にはゴールネットが揺れていた。

広島-町田戦の前半、町田・呉世勲からファウルを受ける広島・アルスラン(30)。この後広島の2点目に繋がった=9月28日、Eピースで(内山田正夫撮影)

 進路をふさいだ行動はサッカーではセオリーで、ポルトガル語で「ずる賢い」を意味するマリーシアと呼ばれる行為。ただ、この時の目的は再開させないことなので再開されては意味がない。主将の昌子は「立っているだけになってしまった。広島だったら蹴らせていないだろう」とチームの経験不足を悔やみ、相手が嫌がるプレーを突き詰めていく必要性を説いた。  黒田監督が「前線でのチャンスがファウルで終わってしまった」と嘆いたように、町田は勢いに乗れそうで乗れなかった。「ここぞのピンチでイエローカードをぎりぎりもらわないくらいのファウルの仕方が、ものすごくうまい」と昌子。そう実感を込めるほど、どこまでも抜け目ない広島に勝ち方を学ぶ試合となった。(加藤健太) 

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