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陸上の女子やり投・北口榛花選手(26)。8月のパリオリンピックでは、1投目でシーズンベストの65メートル80を投げると、1度もトップを譲らず金メダルを獲得しました。フィールド種目では、日本女子史上初の快挙です。花の都にトレードマークの“はるかスマイル”が弾けました。

そして9月、世界のトップ選手だけが出場できるダイヤモンドリーグ・ファイナルで連覇を達成しました。

世界選手権、オリンピック、ダイヤモンドリーグと、ビッグタイトルを総なめにした、まさに世界女王です。

そんな北口選手にオリンピックの裏話や気になることをすべて聞きました。

■オリンピック以降の反響は?

オリンピック以降メディアにイベントに引っ張りだこだが、反響は?

北口選手
「久しぶりに日本に帰ってきた。結構時間があいたにもかかわらず、たくさんの人がお祝いしてくれて、すごくうれしいです」 古田敦也さん
「(オリンピック前に)『終わったら地元のラーメン屋さんに行きたい』と言ってたけど、食べれたんですか?」 北口選手
「まだ地元に帰れてないので、地元に帰ったときに必ず行きたい」

フィールド種目で日本女子初の金メダル、どのように受け止められましたか?

野村修也さん(弁護士・中央大学法科大学院教授)
「大学の陸上競技部の部長として大会に行っているんですが、女子の選手が金メダルを獲ることが想像できていなかったので、本当にすごいことだなと思います。この間、日本インカレで学生の大会に行った時にフィールド種目に対して注目度がすごく高くなっていて、一般のお客さんたちも手をたたく仕草が多くなりましたので影響あるんだなと思いました」

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■キラキラメイクの裏話「実は緊張で…」

■キラキラメイクの裏話「実は緊張で…」

今回は北口選手に、オリンピックの舞台裏からやり投に関する素朴な疑問までお聞きします。

まずは、パリオリンピック“きたぱる劇場”舞台裏。この「きたぱる」、番組のあるディレクターが北口選手のことをこう呼んでいるんですが、これはなぜ?

北口選手
「(番組ディレクターが)大学の先輩で、大学の同期とかには、よく『きたぱる』と呼ばれていました」
「(Q.ご自身ではどう思う?)インスタグラムとかのアカウント名も『ぱる』にしている。ちょっと恥ずかしいですが、うれしいです」

そんなきたぱる劇場、振り返っていきましょう。

パリ五輪 決勝の一本目 この記事の写真

まずは「誰も超えられなかった1投目」が今シーズン最高の65メートル80。結局この一発で試合を決めていたわけですね。

古田さん
「北口選手といえば最後に逆転して勝つというイメージがあったので徐々に上げていくのかなと思ったら、結局1投目で決まりましたね。これは狙っていた?」 北口選手
「そうですね。オリンピックという舞台で、やっぱり勝負にこだわらなければいけなかったので、1投目からできるだけいい記録を投げて他の選手にプレッシャーをかけたいという気持ちでした」 古田さん
「この時にある程度、自分の中で実感はありましたか?」 北口選手
「そうですね、1投目これだけ投げれたら、6投目までもっと記録伸ばせるんじゃないかと思いながら試合はしてました」 勝者の鐘を鳴らす北口選手

そして、優勝者だけが鳴らすことを許される「勝者の鐘」を鳴らし、感情を爆発させる場面も印象的でした。

古田さん
「いいシーンでしたね。興奮しすぎて鳴らし方はイマイチですけど(笑)」 北口選手
「思っていたよりイマイチだったかなと。もう少しうまく鳴らせたんじゃないかなと思います」 キラキラメイク SNSで大反響

そして、決勝の舞台にキラキラメイクで登場し、SNSでも大反響でした。

浅尾美和さん
「色んな角度からキラッときらめくメイクがオリンピックという舞台にぴったりだなと思って見ていた。あれにはどのような思いがあった?」 北口選手
「海外の選手も自分だけのメイクアップをして試合に臨んでいる選手が多かった。あと私は、今シーズンはピンクと決めていた。決勝の当日は緊張しすぎてラメを取る量が多くなってギラギラになってしまった。時間がなくて調整するのが面倒くさくてそのまま行った。多分、競技するごとにラメが落ちていって、最終的には良い感じに」 古田さん
「気合の表れではなかった?」 北口選手
「その後の試合でも、ちょっと派手目にしました。『これが自分だ』と見せれるように」

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■「もぐもぐタイム」なぜあの姿勢で? 愛用椅子も紹介

■「もぐもぐタイム」なぜあの姿勢で? 愛用椅子も紹介

もぐもぐタイム

いわゆる「もぐもぐタイム」と呼ばれた場面が、連日メディアやSNSで話題になりましたが、なぜこの体勢なんですか?

北口選手
「競技場内に椅子が用意されているが、そこに座ると姿勢が少し崩れてしまうのでうつ伏せが一番。こんなに撮られるとは思っていなかった。撮られてると分かっているから、まだ撮るの?って感じでした」
「やり投は反って投てきする。おなかが縮むと、反るのにもっとエネルギーを使わなきゃいけなくなるので、おなかを伸ばした状態でキープしたい」

その良い姿勢を保つために北口選手が愛用しているのが、座面が18度、前に傾いている椅子です。

北口選手
「骨盤が後傾するとおなかが縮んでしまう。それを日頃から防いで、パフォーマンスをずっと上げていけるようにしている。この椅子に座ると猫背にならないんです」

この椅子の開発チームの1人、東京有明医療大学の小山浩司准教授にお話を聞きました。

小山准教授
「座面が斜めになっておりまして、猫背の時に胸が丸まるんですけど、(前傾が)丸まりを抑えてくれる。高さに意味がありまして、高さがもし間違っていたら、いくら斜めになっていても効果はない。北口選手にも座っていただいて高さを決定しています。もちろん姿勢が良いことによって、本来肩があるべきところにあるので、筋肉に負担がかからず上がったり可動域が広くなったりする。パフォーマンスにつながっている」

「身体を本来あるべき位置に戻す。そして可動域を広げる効果がある」ということですが、北口選手はいつごろから使い始めたんですか?

北口選手
「この椅子は東京オリンピックが終わった後から作られ始めて、使い始めたと思います」
「(Q.どこにでも持っていく?)そうです。今は椅子を分解できるようにして下さった。海外遠征にも持って行く」
「(Q.椅子を使ってから良くなった実感ある?)そうですね。大きく崩れなくなった」

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■パリ五輪での後悔「名言を残せなかった」

■パリ五輪での後悔「名言を残せなかった」

あの体勢には意外な理由がありましたが、やはり皆さん食べているものも気になったようです。「カステラ」がXのトレンド入りもしました。

松木安太郎さん
「チェコで好きな食べ物は?」 北口選手
「カステラじゃないんですけど、『バーボフカ』というパウンドケーキみたいなのがある。それはおいしいんですけど、カステラよりもっと水分取られる。なかなか競技場に持ってくのが難しいかなと思っています」 古田さん
「お父さんがパティシエということで、『特製ケーキを作ってもらう』と言っていたが、まだ実現されていない?」 北口選手
「まだ実現できてないです。何とか私の希望通りになることを祈っています。リクエストは出しているが、たまに構想が食い違う時がある」

名場面振り返ってきましたが、実は北口選手はある場面について後悔されているそうです。

北口選手
「後悔は“名言を残せなかった”こと。頭の回転が完全に止まっていた。疲れとかもありますし、日頃から3言語ぐらいしゃべっているので。何も用意していなかった」
「(Q.その後、何か考えた?)考えても良いものは出てこないという結論になりました」

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■やりの持ち運びは? 距離が伸びないとなぜファールに?

■やりの持ち運びは? 距離が伸びないとなぜファールに?

続いては、「教えて きたぱる!やり投の素朴な疑問」です。

パリ五輪 やり投 決勝

まずは、これがないと始まらない、やり投の「やり」。実際に普段使用されているものをお持ちいただきました。

浅尾さん
「(持ってみて)思ったより軽くて長いですね。移動で持ち歩く時はどうしているんですか?」 北口選手
「筒に入れて(持ち運び)。分解できない。試合に持っていく時は1本ではなくて何本か持っていく。なので大きい筒を持ち歩いています」

このやりに関する気になるシーンがあるんです。

パリ五輪で、北口選手が他の選手を呼び止め、やりを受け取ります。これはどんなシーンなのでしょうか?

北口選手
「やりを検定して持ってくるが、ポーランドの選手が持っていったやりが自分(北口選手)のやりだと気付いた。せっかく自分のやりを出したから、自分のやりを投げたいなと思ってたのになくて、わざわざ呼び止めて『自分の順番が先だから、先に投げさせて』と言っています」
「やりの種類はほぼ決まっているので、あとはその日のグリップの持ちやすさでやりを決めています」 松木さん
「距離が伸びなかった時にわざと線を踏んでファールにするのはなぜ?」 北口選手
「特に理由はないですけど、あまり低い記録は残したくないのと、残っても成績にあまり左右されない」
「(Q.低い記録よりもファールの方はよい?)そうかなと思います。でも1投目で失敗した時は低くても残します」

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■これから目指すものは?

■これから目指すものは?

早稲田大学教授の中林美恵子さんは“声”が気になるそうです。

中林さん
「物を投げる時に力が入るので、みなさん声が出るかなと思うんですけど。投げた後にも声が出ているのはなぜ?」 投げた後に叫ぶのはなぜ? 北口選手
「力んでいる時は声が出なくて。投げる前に息を吸って腹圧が高まっている状態で投げた方が力が分散しない。吸い込んだ息を全部出し切っているんじゃないかなと。叫ぼうとはしていない」 古田さん
「今まで金メダルを獲ってきたから、これからどういうことを目指していますか?」 北口選手
「来年世界選手権がある。そこでも金メダルを連覇したい気持ちがあります。あとは70メートルという記録が一つの壁でもあるので、70メートル目指してこれから頑張りたいなと思います」

(9月29日放送「サンデーLIVE!!」より)

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