新設されたバスケットボールコートでシュートを放つ笠井菜未さんと白慶花コーチ(右端)=名古屋市昭和区の桜花学園高で2024年8月27日午前10時42分、川瀬慎一朗撮影

 先生、バスケがしたいです――。生徒のそんな熱い思いに応え、今夏、新しく誕生したバスケットボール部がある。多くのオリンピック選手を輩出している高校女子バスケ界の名門、桜花学園高(名古屋市昭和区)だ。

 同高は学校法人・桜花学園が運営する私立女子高。バスケ部は高校総体25回、国体22回、ウインターカップ24回の全国優勝を誇る。7~8月に実施されたパリ・オリンピックの女子バスケでは、高田真希、馬爪エブリン両選手ら同高出身の4選手が活躍した。

 全国から優秀な選手が集まるバスケ部には現在23人の選手が所属。体育館に併設された寮で暮らし、バスケ漬けの日々を過ごしながら全国制覇を目指している。今年の高校総体では41大会連続41回目の出場を果たし、3回戦で昨年の決勝で相対した京都精華学園(京都)と対戦したが1点差で涙をのんだ。

 そんな強豪高に、なぜ新たなバスケ部が生まれたのか。

 同高バスケ部は強化指定クラブのため、推薦を受けた特待生しか入部できない。同高に入学してきた生徒の中には、中学までバスケをやっていたり、高校でバスケを始めたいと希望したりする子も多く、「高校でも続けたかった」「私もバスケがしたい」といった声が寄せられていた。

 そうした声に応えようと、今年7月に誕生したのが、特待生でなくても入部できる「誰でもバスケ部」だった。既存の「強化部」とは練習メニューも時間帯も異なり、現在は約10人が活動している。

「誰でもバスケ部」の練習用に作られたバスケットボールコート=名古屋市昭和区で2024年8月27日午前10時12分、川瀬慎一朗撮影

 部員の多くは他の部活動と兼務しており、バスケ初心者が半数。「試合で勝つ」ことよりも「楽しむ」ことに重点を置いているのが特徴だ。

 だが、そこは名門校。コーチ陣は超一流で強化部のアシスタントコーチをしている2人が務める。2人とも同高OGで元実業団チームの選手。部員たちは楽しみながらも本格的な指導が受けられる。

 「桜花学園の看板であるバスケにいろいろな生徒に触れてもらい、バスケを好きになってほしい」と言うのは、コーチの一人、白慶花さん(31)。「トヨタ紡織サンシャインラビッツ」など女子実業団トップリーグ「Wリーグ」に計8年在籍した経歴を持つ。「もしかしたら強化部に入れる選手が出てくるかも。そうなったら面白い」と期待を示す。

 来年度以降、強化部が出場しない愛知県内の私学で競う大会や名古屋市民大会などへの出場を目指している。8月末には「誰でもバスケ部」が屋外で使用できる新コートが誕生。1学期までは週1日1時間半ほどの練習だったが、2学期からは練習日を増やすことが可能となった。

 同高2年の笠井菜未さん(17)は小学1年からバスケを始め、中学まで続けていた。高校で「強化部」のマネジャーに転向したが、「プレーしたい気持ちも残っていた」といい、誰でもバスケ部に入部した。笠井さんは「やっぱり楽しい。クラスメートにもバスケの魅力を伝えて部に勧誘しています」と笑顔で話す。【川瀬慎一朗】

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