スクラムハーフとして存在感が増す日本代表の藤原忍選手=熊谷ラグビー場で2024年9月7日、長澤凜太郎撮影

 ラグビー日本代表が目指す「超速ラグビー」の中心として存在感を増しているのが、スクラムハーフ(SH)の藤原忍選手(25)=東京ベイ=だ。出足の鋭さと判断の速さで日本の攻撃をテンポアップさせる。

代表初トライ

 桜のジャージーを着始めて間もない藤原選手にとって、待望の瞬間が訪れた。15日のパシフィック・ネーションズカップ(PNC)準決勝、サモア戦。15点リードの後半18分、相手陣深くに攻め込むと、最後は密集からボールを持ち出した藤原選手が縦に突っ込んで、代表5キャップ目で初トライを挙げた。

 大阪府出身。日本航空石川高を経て進学した天理大では4年時に全国大学選手権初優勝の立役者になった。持ち味はテンポのいい球さばきと、スペースを見つけてのラン。2021年にリーグワンの東京ベイ(当時トップリーグ・クボタ)に入団すると、22~23年シーズンの初優勝にも貢献するなど実績を重ねた。

 日本代表に初招集されたのは、第2次エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)体制が本格始動した今春だった。「超速ラグビー」を旗印とする中で、鍵を握るのがSH勢だ。昨秋のワールドカップ(W杯)メンバーでは流大(ながれ・ゆたか)選手(東京SG)は代表を引退し、福田健太選手(東京SG)はケガで出遅れている。主力候補だった斎藤直人選手は新天地のフランス・トゥールーズに渡った。

天理大4年の時に全国大学選手権初優勝に貢献した藤原忍選手(中央)=東京・国立競技場で2021年1月11日、長谷川直亮撮影

 新戦力が望まれる状況で、台頭したのが「アタックが強みの正統派、トラディショナル(伝統的)な日本のSH」(ジョーンズHC)という藤原選手だ。6月22日のイングランド戦に途中出場して初キャップを刻み、PNCでは1次リーグのカナダ戦と米国戦、準決勝サモア戦といずれも先発で攻撃を引っ張り、決勝のフィジー戦の先発メンバーにも名を連ねた。

 米国戦前日の9月6日、ジャージー授与式で藤原選手は、元日本代表のSH堀越正巳さん(55)と交流した。堀越さんは、ジョーンズHCが「小さいがパスが速く、ラック周りのさばきがうまい」と評するレジェンドだ。堀越さんからは「9番(SH)はFWと一緒のように戦わないとチームは負ける」と金言を授かった。

 藤原選手は「本当にその通りだなって。フィジカルも(1対1の)バトルも負けないように。その上でテンポを上げて『超速』を出していく」。新たなSHの成長は、エディー・ジャパンの理想形を浮かび上がらせる。【角田直哉】

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