引退記者会見でチームメートの山田哲人内野手と村上宗隆内野手から花束を贈られ、涙をぬぐうヤクルトの青木宣親外野手=東京都港区で2024年9月13日午後0時28分、長谷川直亮撮影

 アスリートの引退記者会見で、冒頭にこんな発言をする人は珍しい。「たくさん質問してください」。プロ野球・ヤクルトの青木宣親選手(42)が13日に東京都内で行った会見は質問が尽きず、約1時間に及んだ。

 プロ生活21年間で日本選手歴代5位の日米通算2723安打を放った希代のヒットメーカーは日本球界でシーズン200安打を2回も記録した後、米大リーグに挑戦し、2014年にロイヤルズでワールドシリーズに出場した。日本代表としては06、09年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)制覇にも貢献した。

 野球人生で最も印象に残っているのは「(21年に)ヤクルトで日本一になれたこと」と育ててくれた球団への愛情は深い。自分の野球人生への採点を求められると「100点満点」と力強く言い切った。

2021年11月のクライマックスシリーズ・ファイナルステージの巨人戦。七回裏2死満塁、ヤクルトの青木宣親が2点適時打を放つ=神宮球場で、西夏生撮影

 こだわり続けてきたのは「あきらめないこと」だ。「人が無理だと言っても、大概のことはかなう」との信念を持つ。引退を告げると泣きじゃくった子供たちに伝えたことも同じだ。「パパもママもあきらめなかったよ。自分に負けないような大人になってくれ」

 現役最年長野手として臨んだ今季中盤に引退を意識し始め、終盤まで思いは変わらなかった。「自分の思ったようなパフォーマンスをファンに見せられなくなった」。今季は13日時点で61試合出場で、打率1割9分2厘、9打点。「後輩たちに示しがつかない」と感じていた。

 頭から離れないのは若手の存在だ。自分が得てきた経験や知識を惜しみなく注ぎ込み、人間的な成長も促してきた。青木選手を慕う一人で、会見中に花束の贈呈役を務めた村上宗隆選手は「僕が人間的にも駄目なことをした時に、愛を持ってしかってくださった」と感謝を述べると、言葉を詰まらせて涙を流した。思わず、青木選手がもらい泣きする場面もあった。

 監督業への関心を問われた青木選手は「やってみたいです。もちろん、野球絡みは全部興味があります」と即答した。「ミスタースワローズ」として尊敬を集めてきた存在だけに球団も放ってはおかないはずだ。立場は変われど、ユニホームを身にまとって、ツバメをけん引する姿を見る日が来るかもしれない。【岸本悠】

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