サッカーJ3のギラヴァンツ北九州が奮闘している。5位とJ2昇格プレーオフ(3~6位)圏内を維持。自動昇格となる2位とは勝ち点差10につけている。
北九州は2022年からJ3で戦い、23年は最下位の20位に沈み、J2復帰を願っていたサポーターらの期待を裏切った。
今年は直近2年間で失敗した「組織的なチーム」を目指し、J1経験があるFW永井龍選手(33)などベテランを数人獲得。昨シーズンは新人だったMF高吉正真選手(24)など経験を積んだ若手選手との融合を図った。
今季就任した増本浩平監督(42)は、昨季6月にJ3のガイナーレ鳥取の監督に就任すると、18位だったチームを最終的に6位に上昇させた実績があり、「選手にはベクトルを自分に向けてサッカーに取り組み、Jリーグ60位からの出発であることを何度も伝えた」と意識改革から始めた。
戦術ではセンターバックを中心とした守備を再構築。1試合平均失点数は1点以下で、13試合連続負けなしも達成。GK田中悠也選手(24)は「試合に出られなかったり勝てなかったりするのを誰かのせいにする人がいなくなった。全員が昇格したいと強く思っている」と終盤戦に向けてチームの成長と団結を実感する。
地域密着推進へスタジアム活用 VIPルームで企業採用説明会
戦力の充実だけではなく、Jリーグの理念である地域密着を進めるために、クラブは地域課題の解決にも取り組む。
ミクニワールドスタジアム北九州(北九州市)で3月31日にあった大宮アルディージャ戦では、スタジアムのVIPルームが企業の採用説明会場となった。クラブによるとJリーグの試合前に、スタジアムを採用説明会の場所にした例は珍しいという。
参加したのは、大学や大学院に通うサポーターなど学生約40人と、チームのスポンサー企業6社。各企業の担当者は、ピッチやスタンドが見える景色を前に仕事内容などをアピールし、その後は試合観戦をしながら親睦を深めた。
開催のきっかけは、企業側が労働力不足解消と学生への知名度向上で、学生側は地元への就職を希望する声を、耳にしたことだった。ギラヴァンツ北九州パートナー事業部の肥田拓也部長(50)は「試合のためにスタジアムは一日中借りていて待ち時間がある。地方クラブは地域との『つなぎ役』になることが必要になってきている」と話す。
プロスポーツクラブを活用した取り組みは、地方クラブの先進事例として注目されそうだ。【林大樹】
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