「悲願達成おめでとう」――。3日未明、パリパラリンピックの車いすラグビー決勝で日本は強敵米国を破り金メダルを獲得した。その輪に越谷市在住で、代表チーム唯一の女性である倉橋香衣選手(33)もいた。銅メダルだった東京大会に続き、障害をものともしない防御と相手の動きを読む頭脳プレーで勝利に貢献。同市にある母校・文教大学の同窓生や市民から喝采と祝福がおくられた。
3日朝、大学の級友たちの無料通信アプリ「LINE(ライン)」が沸き立った。試合中から「行けー」と実況が入り、勝利直後は「香衣、おめでとう」「感動した」「私たちの誇り」とメッセージが続いた。本人からの返信は午前7時前。「ありがとう! 応援ありがと!!!」
神戸市出身。体育教師を目指し入った同大3年の2011年春、トランポリン部の練習中に落下し首を損傷した。鎖骨から下の多くの機能を失いながら持ち前の「前向き思考」でリハビリし復学。車いすラグビーに出会い、女子初の代表になった。この間、応援を続けたのが体育専修クラス(男女44人)の級友たちだ。倉橋選手も「皆の支えがモチベーション」と語っていた。
深谷市在住の小学校教諭、中村朋美さん(35)は「泣いてるよ」とメールした。取材に「金メダルを手に笑顔の香衣を見て昔の日々が思い出されて……。努力を見せないけど、やってきたことが実ったね」と話した。
倉橋選手は3年前の銅メダル獲得後、越谷市への表敬時に「正直悔しい。パリへ一年一年トレーニングを続ける」と語っていた。所属先の商船三井(東京)によると、本社人事部で週数回働く傍ら、クラブや代表の練習や合宿、試合を重ねた。今大会は準決勝オーストラリア戦の延長、相手エースの動きを止め、勝ち越しトライの起点になるなど活躍した。
同市も沸いた。3日午前2時から急きょ市役所ロビーで決勝戦のパブリックビューイングを行い、直前の広報ながら市民約10人が熱く声援。「やったー」と喜びが広がった。同市在住で、代表チームのマネジャーとして北京、ロンドン大会に帯同した斎藤智恵さん(41)は「ここまで来るとは。素晴らしい。倉橋さんも女子選手として引っ張ってくれた」と涙ぐんだ。
福田晃市長は「相手を果敢にブロックする活躍が大きく貢献した。市民に感動と勇気を与えてくれ心から祝福します」とコメントを発表した。【武田良敬】
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