東京・有明テニスの森公園で26日に開幕したユニクロ全日本ジュニアテニス選手権。今年の大きな特徴は車いす種目が加わったことだ。ジュニア大会で車いす種目が併設されるのは国内では初めて。昨年からトーナメントディレクター(TD)を務める元プロテニスプレーヤーの奈良くるみさん(32)が描く大会の未来は――。【浅妻博之】
車いす種目があるのは9月4日から3日間。男女混合のシングルスのみの実施で、出場選手は男子7人、女子1人の計8人だ。まず4人ずつが2組に分かれてリーグ戦を争い、上位2人が決勝トーナメントに進む。大会中には選手向けの指導講習会も予定している。奈良TDは「わざわざ来たのに負けて1試合だけで帰ることがないように(総当たりの)グループ戦にしました。車いすテニスの選手にとって刺激になるような大会にしたい」と狙いを語った。
大会アンバサダーには、車いすテニスでパラリンピック金メダルと4大大会をすべて制覇する「生涯ゴールデンスラム」を達成し、2023年に現役を引退した国枝慎吾さん(40)が就任した。テニスで国内最高峰のジュニア大会として位置づけられる大会。車いす部門の新設については、長らく車いすテニス界の第一人者として活躍してきた国枝さんの思いがある。国枝さんは「選手にとって大きな目標ができ、世界に飛び立つきっかけにしてほしい」と期待する。
テニスの4大大会では、車いす部門は同じ大会の中で行われる。4大大会に過去何度も出場してきた奈良TDも、健常者と車いす選手が一緒に大会をやるのは当たり前の感覚だった。しかし、「国枝さんに言われて、初めて珍しいことなんだと(気づいた)。テニスっていいスポーツなんだなって思いました」。ジュニアの車いす大会は他にもあるものの、健常者を含めた最高峰の大会と一緒に行うことで設備や環境面を充実させることができる。奈良TDも「ジュニア大会でも車いす部門が当たり前になってほしい。選手にも友達をたくさん作って交流してほしい」と未来を思い描く。
ユニクロ全日本ジュニアテニス選手権は暑さ対策にも注力しており、昨年は試合後に選手が氷水で足を冷やす「アイスバス」を導入した。今年はコンディショニングルームを設け、フィットネス用のバイクやストレッチマットを用意した。さらに試合中に適切な水分補給ができているか認識してもらうため、試合の前後の体重管理も行っている。奈良TDは「試合後にクールダウンでジョギングをしてバイクをこぎ、ストレッチするのがリカバリーになってパフォーマンスアップにもつながる。プロになってからは体のメンテナンスがとても大事になる」と意義を強調する。また、車いす選手は温度がより高い地面と近い位置でプレーする。このため、暑さ対策は欠かせない。今回はすべての試合を室内で実施してトレーナーも配置している。
奈良TDはコートを頻繁に回っては、気軽に選手に話しかけている。時には、写真撮影にも応じている。「悔しくても負けてしまう子のほうが多いけど、頑張ったら成長できると伝えたい」。奈良TDの行動にはそんな思いが込められている。そして、こう語った。
「私もそうだったけど、『嫌だなあ』『早く終わっちゃいたいな』『逃げたい』とか思うこともあるかもしれない。でもその緊張感は普段の生活では味わえないこと。それだけ頑張って、期待もされるから緊張もする。緊張する経験を存分に味わって、悔しさも次にいかせる大会にしてほしいです」
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