【滋賀学園-青森山田】七回裏青森山田2死三塁、吉川が適時打を放ち、ガッツポーズ=阪神甲子園球場で2024年8月19日、吉田航太撮影

高校野球・夏の甲子園準々決勝(19日)

○青森山田1―0滋賀学園●

 息詰まる投手戦を制したのは、木製バットを使う中軸の一振りだった。青森山田は六回まで内野安打1本に抑えられていたが、今大会無安打だった5番・吉川勇大が鬱憤を晴らすかのように貴重な一打を放った。

【滋賀学園-青森山田】七回裏青森山田2死三塁、吉川が適時打を放つ=阪神甲子園球場で2024年8月19日、吉田航太撮影

 両チーム無得点の緊迫した試合が動いたのは、七回だ。先頭の2番・佐藤隆樹が一塁側のボテボテの内野ゴロに快足を飛ばして安打をもぎとった。ここで滋賀学園は、2年生の土田悠貴からエースの脇本耀士に代えた。

 青森山田は犠打と内野ゴロで2死三塁とし、打席に入ったのが吉川だった。「『絶対に打とう』と自信を持って打席に入った」。ここまでの2試合で6打数無安打、この試合でも2打席凡退していた。バットが走っていないと感じていた吉川は、2打席目までに使っていた890グラムの木製バットから少し軽い850グラムのバットに変えて3打席目に向かった。

 初球、2球目はいずれも内角気味の直球を見逃し、1ボール1ストライクとなった。そこで兜森崇朗監督は吉川に伝令を送った。「自分のスイングを信じてお前の好きな球を打て」。3球目は高めに甘く入った直球を逃さなかった。打球は左前へ。大会初安打が殊勲打になった。

 兜森監督は前日の練習で、吉川に「打てないというプレッシャーで自分の努力を無駄にしてしまうのではなくて、次の安打を出すためにベストを尽くし、結果は俺に任せていいんだ。思い切って振ってくれ」とアドバイスしたという。結果で応えた吉川に対し、試合後は「本当にうれしかった」と感慨深い表情で振り返った。

 ここまで2試合連続2桁安打を記録した打線だったが、この試合は一転して4安打にとどまった。兜森監督は「(1得点の)バッティングは大反省だが、1―0の試合をものにできたところには大満足」と振り返った。強打だけでなく、しぶとさも見せて春夏通じて初の4強入りを果たした。【高橋広之】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。