レスリング男子フリースタイル65キロ級を制して声を上げる清岡幸大郎=シャンドマルス・アリーナで2024年8月11日、玉城達郎撮影

パリ・オリンピック レスリング男子フリー65キロ級 決勝(11日・シャンドマルス・アリーナ)

清岡幸大郎選手(23)=三恵海運 金メダル

 「本当に一番高いところに上り、そこからの景色を一緒に見せてあげられたらいいな」。清岡幸大郎選手の原動力となってきた願いが初出場のパリ五輪でかなった。景色を見せたかった相手は2022年に亡くなった父義雅さんだ。

 家でレスリングの話をすることはほとんどなかったが、休日になると父と男2人で釣りに行ってゆっくり過ごす時間が好きだった。大学生になり清岡選手が上京すると、義雅さんは中継などで必ず試合を確認して、メッセージをくれるようになった。

 小さい頃は父はレスリングに興味がないと思っていた清岡選手だが、周囲から実は誰よりも試合を楽しみにし、応援していたことを聞いた。「やはり一番身近でずっと支えてくれていた存在なんだなと改めて感じた。五輪出場が決まった時は『一緒にパリに行けるよ』と心の中で父親に伝えた」という。

 23年12月の全日本選手権で東京五輪金メダルの乙黒拓斗選手(自衛隊)を破り、初の五輪切符をつかんだホープ。最大の持ち味はスピードで、6分間攻め続けることができる体力もある。今年に入ってからは精神力の強化にも力を入れた。前もって劣勢になった時の展開とその対策を思い浮かべてノートに書き出すことで、「想定外」を減らしていく。清岡選手は「競技のレベルが向上しただけではなく、考え方の部分でより良くなっているのかなと感じている」と自信を深めた。

 同学年で同じ高知県出身、幼少期から高校まで同じクラブで汗を流したのが女子57キロ級の桜井つぐみ選手(育英大助手)。高校時代は週末になる度に一緒に高速バスに乗り込んで東京に「出稽古(でげいこ)」に通った幼なじみは一足先に金メダルを獲得した。「仲間であり、互いを意識し合うライバルでもある。自分のモチベーションを維持する欠かせない存在」。周囲から受けたたくさんの刺激が、清岡選手を五輪王者に押し上げた。【パリ角田直哉】

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