パリ・オリンピック第13日は7日、卓球男子団体準決勝が行われ、日本はスウェーデンに2―3で逆転負けを喫した。2016年リオデジャネイロ五輪の銀、21年東京五輪の銅に続く3大会連続のメダルを懸け、9日に3位決定戦に臨む。
若いチームには「財産」
最後のバックハンドが空を切ると、エースの張本智和は卓球台に両手をついた。歩み寄ってきた田勢(たせい)邦史(くにひと)監督と抱擁を交わしたものの、ぼうぜんとした表情でその場に崩れ落ちた。
日本は初戦のダブルスで勝利を挙げると、第2試合では張本が、今大会の男子シングルスで銀メダルに輝いたモレゴールを降した。エース対決に勝利する理想的な形で、決勝まであと1勝と迫った。だが、待っていたのは悪夢のような大逆転負けだった。
流れが変わったのは第3試合。戸上(とがみ)隼輔(しゅんすけ)は1ゲームを先取したが、「勝ちたい気持ちが先走ってしまった」。相手のネット際に落とすレシーブによって、持ち味のフォアハンドの強打が封じられる展開に持ち込まれた。そこから崩れてこの試合を落とすと、第4試合の篠塚大登(ひろと)はモレゴールに力の差を見せつけられた。
互いに2勝を挙げて迎えた最終の第5試合を託された張本は序盤、完璧な卓球を披露した。台上の細かな技術、バック対バックのラリーなどで強さを発揮し、2ゲームを連取した。
だが、あと1ゲームが奪えなかった。回り込んでフォアの強打を増やした相手に対応できず、続けて2ゲームを落とすと、最終ゲームも6―3とリードしていたところから一気に押し切られた。
勝利が見えながらの大逆転負けは選手に大きなダメージを残した。張本は「死んで楽になるんだったら死にたい。(3位決定戦は)今の気持ちで言えば、もう頑張りたくない。力は残っていないけど、やるしかない」とうつろな表情で絞り出した。戸上も試合後は目を赤くし、うつむいたままだった。
それでも、3大会連続のメダルを懸けた戦いは続く。選手に前向きな言葉をかけ続けた田勢監督は「1ゲーム、1本を取る厳しさを感じ取ってくれたと思う。若い男子チームにとって、これは財産。この経験でさらに強くなると思う」。
どう気持ちを立て直し、どう戦うか。本当の強さが試されるのはこれからだ。【パリ玉井滉大】
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