2部制の影響で、第1試合終了後にスタンドから引き揚げる観客ら=阪神甲子園球場で2024年8月7日、滝川大貴撮影
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 7日に開幕した第106回全国高校野球選手権大会で、暑さの厳しい昼間の時間帯を避け、試合時間を午前と夕方に分けて実施する「2部制」が初めて導入され、3日目まで行われる。7日は第1試合終了後に観客の入れ替えが実施され、一時的に阪神甲子園球場のスタンドから観客の姿が消えた。

「夕方まで待てない」

 開会式直後にあった有田工(佐賀)―滋賀学園の第1試合は、午前10時8分にプレーボール。滋賀学園が10―6で勝利し、試合終了は午後0時34分だった。試合が午後1時半までに終了しない場合、原則として翌日以降に継続試合となる予定だったが余裕を持って終えた。

 滋賀学園の校歌が流れた後、しばらくすると「午前の部は終了いたしましたから、一度閉門させていただきます。夕方の部の入場券をお持ちのお客さまもご退場いただきますようお願い申し上げます。夕方の部の開門は3時を予定いたしております」と場内アナウンスがあり、スコアボードにも同様の案内が表示された。

 午後1時ごろには、ほぼすべての観客がスタンドから姿を消した。球場内の売店は閉じられ、球場関係者だけに。グラウンドのスタッフは整備をしたり、水をまいたりして、午後4時開始予定の第2試合に備えた。

 観客たちの過ごし方はさまざまだった。20年近く開幕日の観戦に訪れているという兵庫県尼崎市の50代男性は「夕方までは待っていられない」と嘆き、「この後は京セラドーム大阪でプロ野球のオリックス戦を見ることにした」と話した。

施設内のフードコートはほぼ満席で、一部の店舗には列ができていた=兵庫県西宮市の「三井ショッピングパーク ららぽーと甲子園」で8月7日午後1時34分、牧野大輔撮影
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 球場近くの高速道路の高架下では、日陰で座り込んだり、レジャーシートを敷いたりして、休んでいる人の姿も多く見られた。冷房がきいている球場近くのグッズショップは混雑した。

 近くの大型商業施設「三井ショッピングパーク ららぽーと甲子園」の約630席あるフードコートはほぼ満席。高校野球グッズを身につけた人も多く、手軽に食べられるうどん店やファストフード店は混み合った。

 フードコートで休んでいた大阪市内の野球部に所属する高校3年生の男子生徒(17)は「夕方からも観戦する。それまでやることがないので、ここで時間をつぶすつもり」と少し疲れた様子。「選手は熱中症対策をしているので、通しでやってもいいと思うが、見る側からすれば暑いし、いったん休めるのはいいかもしれない」と話した。

 高校野球ファン歴約20年という大阪市内の50代男性も「最後の試合が何時に終わるか心配だけど、とにかく暑い。涼しいところで休めるのでいい」と「2部制」を歓迎した。

働く側にはメリット

第1試合を終え、近隣の商業施設に向かう人たち=兵庫県西宮市の「三井ショッピングパーク ららぽーと甲子園」で2024年8月7日、牧野大輔撮影
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 2部制は運営側にも影響している。球場の飲食や物販を統括するスタッフは、早朝や昼出勤など「3部制」で交代勤務した。

 手探りでの対応となったが、担当者は「暑さで体調不良になってしまう売り子もいるので、暑い時間を避けることは働く側にとってもメリットがある」と語る。一方、ランチタイムに観客が球場から離れるため、「発注量をどうするかなど悩ましい。来夏以降に向け、この3日間の売り上げなどを検証していきたい」と話した。【牧野大輔、皆川真仁、吉川雄飛】

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