パリ・オリンピックのスケートボード男子ストリートは29日、堀米雄斗選手(25)=三井住友DSアセットマネジメント=が暫定7位という崖っぷちから起死回生の大技を成功させての「大逆転」で金メダルを獲得。2021年の東京大会に続き、連覇を達成した。チャンピオンとしての重圧に3年間苦しんだが、パリのコンコルド広場で再び強い光を放った。
この日の決勝。5回披露するベストトリックのうち、3回の失敗が続き、残されたのは1回きりだった。暫定7位。1位の米国選手とは大差がついていた。失敗すれば、メダルは絶望的な状況だった。
勝負に出た。270度回転し、ボードの後部をレールに滑らせる大技を繰り出した。静まる会場の中、ウィール(車輪)が地面に着地する乾いた音が響く。その瞬間、大歓声がわき、ガッツポーズで雄たけびを上げた。
得点は今大会最高の97・08。暫定1位に躍り出て、そのまま金メダルをつかんだ。「1%の可能性。それを今日、最後の最後まで信じ切れた」
苦難の3年間だった。初めて五輪競技に採用された東京大会での金メダル。獲得後は「自分でも訳がわからないぐらい、メンタルも体力もどんどん壊れていった」と振り返る。
日本代表の早川大輔コーチも「いちスケーターから『金メダリスト』になってしまい、普通のスケボーができなくなった。かわいそうだった」と話す。大会でも結果が出ず、悩む日々が続いた。
堀米選手はあえて「原点回帰」に取り組んだ。ストリートカルチャーが出自のスケートボード。競技の練習と並行して、実際の街中を縦横無尽に滑り、跳ねる動画を作ってネット交流サービス(SNS)で公開した。動画にはこんなコメントも添えた。
「急な変化についていけなくて自分を見失う時もあります。常に不安と葛藤だらけだけど、自分を信じてこれからも挑戦していきたい」
スポーツの枠を超える「スケーター」として、愛好家から圧倒的な支持を受ける堀米選手。当初、パリ五輪は、出場すら危ぶまれたが、家族や仲間の励ましも力に、出場権を手に入れると、本番では鮮やかに大逆転を決めて特別な存在へと進化した。
競技では新進気鋭の10代の活躍も目立つ。「小さい子もたくさんいて、日本代表になるのも大変」と苦笑しつつ、「次のロサンゼルス五輪の舞台にも立ちたい」と語った。挑戦はまだ続く。【パリ黒川晋史】
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