パリ・オリンピック スケートボード女子ストリート決勝(28日・コンコルド広場)
吉沢恋(ここ)選手(14歳、ACT SB STORE)=金メダル
最終5本目の試技は、金メダルを確定させての「ウイニングラン」だった。吉沢恋(ここ)選手は「泣きそうだったが、用意した技を決めようって」。
パリの大観衆の視線が小さな背中に注がれる。吉沢選手はきっちりと高難度の技を決めて、両手を突き上げた。
14歳、中学3年生の超新星は「驚きが大きい。全然実感がわかない」と意外なほど冷静に喜んだ。
45秒間で技を連発する「ラン」では、1歳上の赤間凜音(りず)選手に次ぐ2位につけた。一発技の「ベストトリック」の4本目に、女子ではほぼ取り組む選手がいない大技に成功。96・49点をマークして逆転した。最後の試技でも得点を伸ばすなど、攻め続ける姿勢を見せた。
ボードに乗り始めたのは7歳の時。「転ぶと痛い」。弱音を吐くこともあったが、練習に取り組むいちずさは天性のものがあった。
2021年夏の東京オリンピックで、当時13歳だった西矢椛(もみじ)選手が金メダルを取った。その試技の中には、既に吉沢選手が習得済みの技もあった。「それまで大会を意識した練習もしていなかったし、自分がどのレベルなのかも知らなかった」
はるか先だと思っていた世界の舞台を、目指せるかもしれないと可能性を感じた。小さいころから習っていたトランポリンで培ったぶれない体幹を強みに、難しい技を次々と習得し、安定感が増した。
23年の世界選手権5位、今年5月の五輪予選第1戦で3位、6月の最終戦で優勝して五輪代表入り。成長はとどまることを知らず、一気に五輪女王にまで駆け上がった。
会場となったコンコルド広場は「革命」を象徴する地でもある。スケートボード界の勢力図を一気に塗り替えた吉沢選手は「緊張にも勝って、メダルを取れたことはすごいこと。今後の大会や(次回の)ロサンゼルス五輪の予選にも生かしたい」。初々しい笑顔が、真夏のパリに爽やかな新風を吹き込んだ。【パリ角田直哉】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。