【全パ-全セ】九回裏にリリーフ登板した全セの岩崎優=エスコンフィールド北海道で2024年7月23日、貝塚太一撮影

 プロ野球のマイナビオールスターゲーム2024は23日、エスコンフィールド北海道で第1戦が行われ、全セで4年連続出場の阪神の岩崎優投手(33)は11―6の九回に登板し、1イニングを無失点に抑えた。昨季まで7年連続でシーズン40試合以上を投げてきた左腕の嫌いな言葉は「勤続疲労」だ。そこにはマウンドでのクールな表情とは裏腹の熱い思いがある。

 「勤続疲労」

 特に登板数の多い中継ぎ投手が、結果が出なくなるとささやかれる言葉だ。

 岩崎投手は2022年、絶対的な抑えだったロベルト・スアレス投手が前年で退団し、シーズン途中から抑えを担った。結果は登板57試合で1勝28セーブ11ホールド、防御率1・96。ただ、それ以上に6という負けの数と投球内容が周囲の雑音を招いた。この年は球に切れがなく球質が悪く、抑えたとしても走者を背負うことも多く「勤続疲労」とささやかれた。

 「結果が良くない時に、そういったことを言われたり、キャンプの時に『今年はどうか』みたいな声があったり」

 岩崎投手は当時を振り返る。ただ、語気を強め、こうも続ける。

 「そういう声にあらがっていきたい気持ちがありつつ、体のことは自分が一番よく分かってますし、そんなことを外から言われたくないというのもある」

抑えに戸惑った2022年

 岩崎投手は静岡・清水東高から国士舘大を経て14年にドラフト6位で入団した。17年に先発から中継ぎに転向し、この年は自身最多の66試合に登板した。21年からは3年連続で50試合以上に登板しており、今季も前半戦終了時点で登板38試合で、3勝(3敗)14セーブ13ホールドを挙げている。

 岩崎投手自身は、球速が落ちるなど登板数が多い投手に見られる「勤続疲労」そのものは、一般的には存在すると考えている。ただ、自らについては「シーズンの中で好不調はあるが、体の状態が大きく変わっているというのはなく、言われている勤続疲労的なものは感じていない」と断言する。

 では、自らの22年の投球は何だったのか。

 「自分が思い描いている九回に投げるピッチャーと、自分の投球(スタイル)がちょっと違うんじゃないかなと思いながら投げていましたし、そういう声も実際にありました。自信を持って投げられていなかった面があって、そういうのが投球に出てしまった」

 岩崎投手自身、抑えについては150キロ台後半の直球を軸に抑え込む中日のライデル・マルティネス投手のように、「球が速くて落ちる球があって空振りを取れる投手」というイメージがあった。ただ、自らは直球が140キロ前後で傑出した球はない。抑えは自身が担うポジションではないのではないかという戸惑いがあった。

「自身を持てるかどうか」

 22年は湯浅京己投手が最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得し、23年は抑えを務める予定だった。しかし、湯浅投手は万全な状態でマウンドに上がれず結果を残せなかった。そこで再び託されたのが岩崎投手だ。

 「22年も23年も最初は代役みたいな形。去年に関しては湯浅が離脱して、『ちょっと、もう自分がやるしかないな』みたいな感じに吹っ切れた。やっぱ自信を持ってマウンドに上がれるかどうかっていうのはすごく大きいと思う」

 23年は直球のキレが戻り、35セーブを挙げて初のタイトルとなるセーブ王を獲得し、チームも38年ぶりの日本一に輝いた。

 今季も8年連続の40試合登板が見えている岩崎投手だが、体のケアで特に大切にしていることは何なのか。「重点的にケアするところとかトレーニングするところは自分なりに分かっている。それ以外はないですかね」。球速はなくてもプロの世界で生きられた要因の一つである球の出どころが見えづらい独特のフォームを維持するためにも、疲労がたまると動きが悪くなる股関節や肩周り、背中の柔軟性を保つことを意識して毎日、練習前と試合後は電気治療を施している。

 「昔から」と子どもの頃から野球のことになると反骨心があったという。好きな言葉をあえて言えば「継続は力なり」。普段は人見知りで、マウンドでのポーカーフェースの陰に負けん気が潜んでいる左腕は、今季も小差の試合で負担のかかる中継ぎ陣を支える頼もしい存在だ。【荻野公一】

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