第95回都市対抗野球大会(19日開幕・東京ドーム)で、「ミスター社会人野球」と呼ばれる豊田市・トヨタ自動車の佐竹功年投手(40)が現役最後の大会に挑む。異例の「引退予告」から約半年。169センチの小柄な右腕は、どんな気持ちで臨むのか。
都市対抗という舞台はどんな場所なのか。大会を前に7月上旬、愛知県豊田市内で話を聞くと、「お祭りです」と答えが返ってきた。そして、「お祭りはしっかり準備をしないと楽しめない。最後の最後までしっかり準備して、自分の中でやれることをやりきって初めてあの場所で楽しめると思います」という高い意識を口にした。
今年1月、自社メディア「トヨタイムズ」を通じて今夏での引退を発表した。社会人野球では多くの選手がシーズンの終わりに引退を言い渡され、そのままユニホームを脱ぐ。
一方、2011年限りで現役引退した藤原航平監督(44)も、同年の都市対抗東海2次予選で敗退した直後に引退を告げられた上で、補強選手として本大会に出場した。藤原監督は「最後だと分かった上で過ごせた(本大会までの)期間はとても良いものだった」と話し、自身の経験も踏まえ「佐竹はトヨタを少しずつステップアップさせてくれた功労者。トヨタとして彼には最大限のリスペクトを表したい」と早めに引退を告げる判断をしたという。
佐竹投手は香川・小豆島で育ち、香川・土庄高、早大を経て06年にトヨタ自動車に入社。都市対抗では14年に大垣市・西濃運輸の補強選手として日本一に貢献。主将を務めた16年はトヨタ自動車を初優勝に導き、橋戸賞(最優秀選手賞)に輝いた。
足かけ19年に及ぶ社会人野球生活を「トヨタ自動車が名門になるために、強くあり続けるために、ということしか考えていなかった」と振り返る。今は実感もさみしさもないといい、「最後だからといって、特別なことはできない。優勝して終われたら言うことはないが、勝敗は時の運もある。僕を含め、みんなでトヨタらしく生き生きとしたプレーをグラウンドで表現して終わりたい」と穏やかな表情で語った。【円谷美晶】
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