師匠の二子山親方と新十両昇進を喜び、固く握手する生田目関(左)=東京・両国国技館で2024年5月29日午前11時54分撮影

 29日にあった大相撲名古屋場所の番付編成会議で、栃木県さくら市出身で県立矢板高校を卒業した生田目(なばため)竜也関(22)=二子山部屋=の新十両昇進が決まった。26日千秋楽の夏場所で西幕下2枚目で5勝2敗の好成績を上げた。同高出身者の十両昇進は初。生田目関は29日、東京・両国国技館での新十両会見で「後輩も続いてほしい。ゴールではなくスタート。新十両で優勝したい」と意気込みを語った。

 勝てば十両昇進の可能性が大きかった3月の春場所は、相手を土俵際まで追い詰めながら足が滑って届かなかった。「悔しさは忘れず、されど引きずらずの気持ちで体作りをした」という夏場所千秋楽。十両初口(しょくち)の入れ替え戦で、新十両の風賢央を、勢いよく突き出した。

 その瞬間に大声援が飛んだ。「母を初めて国技館に招いたんです。日本とタイの国旗を振る、って。近視なんで見えなかったけど」と笑う。入門時から常々「親に恩返しがしたい」と話した22歳の最高の舞台になった。

 日本人の父親とタイ出身の母親のもとに生まれたが、素直になれない時期があり、中学から矢板市やさくら市の児童養護施設などで暮らした。「テナーサックスや手芸も得意ですよ」と言うが、相撲と出合い、人生が変わった。矢板高には大相撲の部屋関係者が作った土俵があり、大学相撲トップクラスの日体大出身の指導者がいた。3年連続でインターハイに出場するなど頭角を現し、押しを身上とした元大関・雅山の二子山親方の目に留まり2020年1月の初場所で初土俵を踏んだ。

 左膝を痛めて途中休場した時もあったが、4年余りで昇進した。当時の矢板高校長だった菅野光広さん(現県シルバー大学校北校校長)は「千秋楽に勝った直後に『おかげさまで』と電話をもらった。学校に来てくれたり、スマホに連絡をくれたり、良い社会人に成長した」と喜び、矢板高相撲部の後藤剛監督(44)も「名古屋で勝ち越したら化粧まわしを送りたい」と話す。

 夢は「入幕して師匠のしこ名を継ぐ」。体重152キロは入門時より約20キロ増えた。宇都宮駅東口の次世代型路面電車(LRT)停留場そばには、宇都宮市出身とされる初代横綱・明石志賀之助の石像があり、近くを通る際に「かなうように祈っています」。師匠の上を行く日下開山を目指す。【上鵜瀬浄】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。