通算60勝目を挙げ、吉永小百合さん(右)から花束を受ける岡本綾子 =1996年9月1日、富士桜CC
女子ゴルフの第42回フジサンケイレディスクラシック(フジテレビ、産経新聞社など主催)は4月19日、静岡県伊東市の川奈ホテルGC富士コースで開幕する。40年を超える歴史を誇り、幾多のドラマを生んだフジサンケイレディス。記憶に残る「思い出の名場面」を厳選し、当時の記事と写真で振り返る。

(1996年9月1日、山梨・富士桜CC、6409ヤード、パー72)

前日首位に立った岡本綾子が通算6アンダーで、1994年9月の広済堂アサヒゴルフカップ以来2年ぶりの優勝を果たし、賞金1080万円を獲得するとともに、通算60勝(海外18勝)を達成した。これは、樋口久子の72勝に次ぐ史上2番目の勝利数。

岡本は、4バーディー、3ボギー。一時は中盤で大城あかね、橋本愛子らに並ばれたが、11、12番の連続バーディーで再び抜け出した。18番、岡本はグリーンをはずしてボギーとしたが、追い上げた大城を1打差で振り切った。

2位は大城。1打差の3位にはマーニー・マクガイヤ(ニュージーランド)。橋本と野呂奈津子が4位に入った。

順位 スコア 選手 1R 2R 3R

優勝

-6

岡本綾子

210

72

67

71

2

-5

大城あかね

211

70

71

70

3

-4

M.マクガイヤ

212

71

69

72

45歳、22年目の万感「夢みたい」

この2年間勝てそうで勝てない。59勝もしている岡本綾子でも、〝あと1勝〟が永遠のかなたのように思われた日があったことだろう。

45歳。日ごろは忘れている年齢をプレーのたびに思い知らされたことも多かったはずだ。だが、岡本綾子はよみがえった。

379ヤードの18番。2位大城あかねとは2打差あったが、岡本は第2打をグリーン右にはずした。1メートルちょっとに寄せる。大城の第2打は、ピンから約6メートルに乗っていた。

大城が入れて、岡本がはずせばプレーオフだったが、大城のパットはカップをかすめ、岡本は2パットのボギーで1打差の逃げ切り。

フジサンケイレディスクラシックを制し、ガッツポーズする岡本綾子 =1996年9月1日、富士桜CC

なにもかもが胸にこみあげてきて「ついこの間優勝したような気がして…」「子供っぽいかもしれませんが、夢みたいです」と、しばらく目を赤くしていた。

この勝利で樋口久子の72勝に次ぐ60勝。ソフトボールの左腕エース兼4番打者からゴルフに転向して22年目の、大きな区切りだ。

1打差の優勝争いが続き、本来なら、もっともっと緊迫したものが伝わってくるはずだが、不思議と静かな進行だった。

岡本も、女性らしい表現でいった。「朝から、自分の献立通りに行くような気がしてました。いくらおいしい献立を作っても、相手がそれ以上においしく作ることもありますけど、きょうは相手が眼中になかったというか、優雅にゴルフができました。こんな気持ちでやれて、ぜいたくですね」。若いころ、くじけやすくて〝フニャ〟といわれた。13年前、米国に渡ったばかりのころは寂しさに耐えかねて、酒でまぎらわせたこともあったという。

好きな道とはいえ、ゴルフで身を刻むような人生の途中で得た60勝。ここらで「ぜいたく」がいくらあってもいい。(高橋幸雄)

優勝杯を手に笑顔の岡本綾子 =1996年9月1日、富士桜CC

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。