ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の田中熙巳(てるみ)代表委員(92)が24日、東京都内の日本記者クラブで記者会見した。来年に向けて「(被爆)80年は一つの区切り。証言の大運動をやれないかと思っている」と決意を述べた。年明けに石破茂首相と面会する方向で調整していることも明らかにした。
会見には、授賞式に出席した日本被団協の役員3人が参加。田中さんは、ノーベル賞委員会の委員長から式後の夕食会で「(被爆80年の)来年の授賞と思ったが、来年に運動して世界の世論を大きくしてほしいという思いから今年にした」と伝えられたことを明らかにし、受賞は「励ましの意味もあった」と語った。
田中さんは授賞式の演説で、被爆者援護法(1994年制定)に触れた際「原爆で亡くなった死者に対する償いは、日本政府は全くしていないという事実をお知りいただきたい」と原稿にはない予定外の発言をして政府の姿勢を批判した。
この時の思いについて「補償が盛り込まれなかった怒りはずっとある。国民が犠牲を我慢しなければならないというのは間違っている。その間違いが世界にはびこっているという思いがパッと頭に浮かんだ」と説明。さらに「核による被害はとんでもない。元々補償できない被害だと考えてほしい」と訴えた。首相との面会に向けては「唯一の被爆国の日本が核兵器廃絶のリーダーシップを取らないでどうするんだという話をしたい」と話した。
浜住治郎事務局次長(78)は来年3月に米ニューヨークの国連本部で開かれる核兵器禁止条約の第3回締約国会議について「被団協も参加するよう話し合いをしている。(来年に向けて)もう一度被爆者が一体となって、取り組みを議論していきたい」と述べた。
児玉三智子事務局次長(86)は「日本の隅々で被爆者が涙しながら被爆体験を語り続けてきた。いろんなことを言われたが、それを乗り越えて平和賞をいただいた」と喜んだ。【椋田佳代】
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