サッカーJ2・ザスパ群馬のゴールキーパーだった清水慶記さん(39)が引退後、パティシエに転身した。趣味だったチョコレート作りを本業にしようとクラブやスポンサーの支援も受けて3月に起業。プロスポーツ選手は狭き門だが、引退後も生活基盤を維持するのは困難といい、「後輩たちにつなぐため、モデルケースとして絶対に成功させたい」と意気込む。【田所柳子】
清水さんは前橋市出身。前橋商高、流通経済大を経て、大宮アルディージャやザスパに在籍した。現役時代は名前の「けいき(ケーキ)」にちなみ、「ゲームパティシエ」の愛称で親しまれた。
2024年1月に引退して、新たなキャリアをスタート。最初はエクセルやワードの使い方、請求書や見積もりの作り方を学ぶところから始めた。「38歳で引退し、同級生はそれなりの役職に就く中で、社会人スキルは1年目だった」と振りかえる。
サッカー界を引退した選手のキャリア形成には課題が多いという。清水さんは「Jリーグが開幕して30年以上たつが、退職金・年金制度が確立されていない。指導者やスカウトの席はどんどん埋まるので違うことにチャレンジしないといけないが、選択肢は狭く、何を準備すればいいかもわからない」と指摘する。
清水さんは、スポンサーのホームセンター大手「カインズ」(埼玉県本庄市)と協力してマフィンなどを開発。自分のチョコレートブランド「よろこびをしるす。」(慶びを記す)で、クリームチーズ入りのチョコやチョコワッフルを製品化した。10月に前橋市のふるさと納税の返礼品に選ばれ、11月からチームの活動拠点GCCザスパークのカフェでも販売を開始。将来は市内に実店舗を持つのが夢だ。
自身がチョコレート事業で支援を受けたことについて「スポンサー企業に入社するケースはあるが、やりたい事業に挑戦して支援を受けることはほぼない。自分が必ず成功し、こういう支援が正解だと証明したい」と強調する。
ザスパの赤堀洋社長はカインズ出身。清水さんへの支援について「プロサッカー選手の引退は平均20代で、どんどん早まっている。子どものころからサッカーで一つの道を究めた人が、辞めた後にやりたいことを実現して社会に還元し、長く充実した人生を過ごせるようしっかり支援すべきだ」と説明する。清水さんをモデルに、ほかの選手でも一部支援が始まっているといい「支援によって、優秀な選手を獲得するチャンスも広がると思う」と期待も示した。
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