渡辺さんが製作したミニチュアの刀やなぎなた=宮城県気仙沼市で2024年12月6日午前11時26分、遠藤大志撮影

 宮城県気仙沼市で包丁販売や修理を行う「新潟屋刃物店」店主、渡辺義彦さん(69)は売れ残りの包丁などから切り出して作る「ミニチュア包丁」を販売している。インターネットや口コミなどで広まり、市のふるさと納税返礼品にも採用された。知る人ぞ知るこだわりの手作り品として注目を集めている。

 販売しているミニチュアは出刃包丁や柳刃包丁などの和包丁がメインで、刃渡りは約2~8センチ。本物の包丁と同様の切れ味がある。ミニチュアの砥石(といし)やまな板もセットでついてくる。大きさやできばえ、材料費にもよるが、1本1500~7000円ほどで販売している。

ミニチュア包丁を研ぎ、形を整える渡辺義彦さん=宮城県気仙沼市で2024年12月6日午後1時32分、遠藤大志撮影

 「作っていて楽しいんです。趣味の延長ですね」。店は昭和初期に創業し、渡辺さんで3代目だ。普段は包丁の販売や顧客から依頼された刃物の修理などを行い、その合間を縫ってミニチュア作りに励んでいる。

 きっかけは東日本大震災だった。海岸近くの気仙沼市南町にあった店は津波で浸水。その後、仮設店舗での営業を余儀なくされた。途方に暮れるなか、刃研ぎの技術を応用し何か新しいことを始めようと思い立ったのが、ミニチュア包丁だった。

 工業用カッターで刃渡り16・5センチの包丁をミニチュアサイズに切断し、砥石で削り形を整える。厚みや長さなど切り出す部分によって包丁の種類が異なる。次第に熟練し、今では1本の包丁から5~6本のミニチュアを製作できるようになったという。包丁のほかにも刀やなぎなたのミニチュアも同様の方法で製作している。

渡辺さんが製作したミニチュアの包丁。切れ味は本物だ=宮城県気仙沼市で2024年12月6日午後0時48分、遠藤大志撮影

 県外から来た観光客がお土産として買い求めたり、ミニチュア料理の愛好家らが好んで購入したり、リピーターも少なくないという。渡辺さんは「離乳食用に細かく食材を切るときなど、日常の用途でも意外と役に立ちます。ぜひ多くの人にミニチュア包丁の魅力を知ってもらいたい」と力を込める。

 商品は気仙沼市田中前4の新潟屋刃物店や同市南町海岸のセレクトショップ「KNEWS(ニューズ)」で購入できる。問い合わせは新潟屋刃物店(0226・22・2017)。【遠藤大志】

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