東日本大震災を引き起こした断層の状態を宮城県沖約200キロの日本海溝で掘削調査していた海洋研究開発機構(JAMSTEC)の地球深部探査船「ちきゅう」が20日、母港の清水港(静岡市清水区)に約3カ月ぶりに帰港した。埠頭(ふとう)では関係者ら約120人が「おつかれさまでした」と書かれたパネルなどを掲げ、任務を終えて充実した表情で下船してくる研究者らを出迎えた。
研究航海は巨大地震や津波のメカニズムを探る国際研究プログラムの一環。日米欧など10カ国から56人の研究者らが参加し、9月6日に清水港を出港した。調査地点の海上では、六つの大型スクリューを持つ特殊構造と正確な位置情報によって船の位置を数十センチ以内の誤差でキープ。高さ70メートルのやぐらを使い、連結された細長いパイプをつり下ろし、先端のドリルでプレート境界などの海底下を掘削した。
同様の調査は東日本大震災翌年の2012年にも行われており、それ以降の変化や未解明な点の知見を得るのも今回の目的だった。掘削の深さでは総パイプ長で7906メートルの世界記録を樹立し、貴重なデータや試料採取もできたという。
帰港セレモニーでは前川琢巳船長らに花束が贈られ、小山輝之・掘削監督は「荒天もあったが、スタッフ間の連携で正確な掘削ができた。試料の回収率も高く、大成功だった」と手応えを語った。JAMSTECによると、研究成果は詳細な分析を経て、来春の国際学会で発表されるという。【丹野恒一】
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