奈良文化財研究所(奈良市)は19日、出土した木の年代を推定する際の基礎資料となる古代の木製遺物の年輪を写した高精細画像を順次、ホームページで公開すると発表した。現在は年輪の幅を0・01ミリ単位の手作業で測っているが、将来的にはAI(人工知能)による自動計測なども期待できる。奈文研担当者は「文化財研究だけでなく、気候変動や生態などの各分野に役立てることができるはず」と期待している。
樹木の年輪は成長時期の気温などで幅が変わることが知られており、例えばヒノキなら春の気温が高ければ幅が広く、低ければ狭くなる。年代測定はこの特徴を利用し、試料の年輪幅の変化が長期の変化パターンを集めた標準曲線のどこに当てはまるかで年単位で伐採時期を特定できる。ただ、年輪の幅は0・01ミリ単位と極小のため写真撮影が難しく、研究者は顕微鏡越しでの手作業の測定を迫られていた。
今回は2010年度に実施した平城京左京三条一坊一坪(現在の平城宮いざない館の場所)の調査で出土した井戸枠や木簡など遺物18点の高精細画像を20日から公開する。近年のデジタル技術向上で可能になったといい、奈文研は今後、AIの技術者などにも協力を呼び掛ける考えだ。
奈文研の馬場基・埋蔵文化財センター長は「数字でなく画像になれば、年輪の測定がずっと身近になる。データが蓄積されれば、過去の気候変動が年単位で分かるようになるかもしれない」と期待を込める。森先一貴・東大大学院准教授(先史考古学)は「研究の流れが大きく変わる。将来的には、他の地域との比較や生育環境の変化などの研究にも応用できる可能性がある」と評価している。【稲生陽】
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