熊本県警察本部=清水晃平撮影

 熊本県警は18日、県警玉名署刑事課の巡査だった渡辺崇寿(たかとし)さん(当時24歳)の過労自殺に対する県の賠償責任を認めた4日の熊本地裁判決を受け入れ、控訴を断念すると明らかにした。宮内彰久県警本部長は遺族に向けて初めて謝罪し、再発防止を誓う談話を発表した。18日が控訴期限で、長時間労働への注意義務違反を認めて県に約6180万円の賠償を命じた1審判決が確定する。

 県警は「自死の要因は長時間勤務にあった」と全面的に責任を認め、遺族に対して今後、直接謝罪する意向も示した。宮内県警本部長は談話で「尊い命を失わせてしまったことに深くおわび申し上げる」と遺族に謝罪。再発防止に向けて「二度とこのような悲しい出来事が発生しないよう、組織を挙げて職員が働きやすい勤務環境の構築に努める」と述べた。

渡辺崇寿さん=遺族提供

 判決によると、渡辺さんは玉名署刑事課に異動してから約半年後の2017年9月、自殺した。亡くなる前の5カ月間の時間外労働は月143~185時間で、過労死ラインとされる月80時間を大幅に超過。判決は、過労状態を把握できた立場の県警が対応を怠ったため、渡辺さんは精神障害を発症し、自殺に至ったと判断した。

 県警の控訴断念を受け、渡辺さんの母美智代さん(64)は「ほっとした。『たか、お疲れさま、良かったね』と報告ができる。今後、たかのような人が出ないことを願っている」と取材に語った。遺族側代理人の光永享央弁護士は「自死から7年以上たっており、もっと早い段階で責任を認める決断ができなかったのか」と話した。【野呂賢治】

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