会計検査院は18日、新型コロナウイルス禍で打撃を受けた中小企業の資金繰りを支えるため、政府系金融機関が実施した特例支援に関する検査結果を明らかにした。回収不能をはじめ、回収不能が見込まれる貸し付け、不良債権は総額約1兆5600億円に上ることが判明。1年前に公表した前回の調査結果から5000億円近く膨らんだ。2023年秋以降、元利金の返済が本格化しており、支援で延命していた企業の破綻が顕在化したとみられる。
検査院によると、日本政策金融公庫の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」と、商工中金の「危機対応融資」について、23年度末時点の回収状況を調べた。いずれも20~23年度、中小企業に直接貸し付けなどを行ったもので、実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」が多くを占める。
貸し付けの件数は約127万件、総額20兆6397億円で、このうち回収不能は1490億円(22年度末時点の前回調査比792億円増)となった。さらに税法上確定ではないものの、回収不能が見込まれるとの会計処理がなされたのは2178億円(同931億円増)、「借り手が経営破綻している」「回収不能の危険性がある」といった「リスク管理債権」は1兆1965億円(同3179億円増)に達した。
完済は29万件、総額5兆5651億円を確認。ただし、別の支援制度を利用した「借り換え」も含まれるという。
このほか検査院は、全国の信用保証協会が新型コロナ対策として、民間の金融機関から融資を受ける中小企業の保証を請け負った約202万件、融資額の累計38兆2664億円について検査した。その結果、協会が立て替え払いした弁済総額4848億円のうち、破産申し立てや民事再生手続きに伴い、279億円が回収不能と見込まれることが判明した。新型コロナ関連の保証を巡り、債権状況が明らかになるのは今回が初めて。
検査院の担当者は、前回の調査結果より回収状況が悪化した理由を「今回は対象期間に元利金返済が本格化した23年秋以降を含むため」と説明。そのうえで「今後は新型コロナ関連で信用保証協会から保証を受けた民間融資の返済も本格化し、さらに厳しい状況が予想される」との見通しを示した。【渡辺暢】
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