経済産業省は16日、2040年時点の電源別の発電コストの試算結果を公表した。これまで他の電源と比べ安価とされてきた液化天然ガス(LNG)火力は、円安の影響などを織り込んだ結果、前回試算(21年)よりも上昇した。コスト削減が進む事業用太陽光発電は最安値だった。
試算は17日に経産省が示す、40年度の電源構成などを定める次期エネルギー基本計画の改定案に反映させる。
LNG火力は、前回試算で示した30年時点より1キロワット時あたり5円超増となる16~21円に引き上げた。円安などによる燃料費の増加や、欧州で導入されている二酸化炭素(CO2)排出権取引の市場価格の上昇などによる対策費の増加を踏まえた。
事業用太陽光は1円超減の7~8・9円で、前回試算に続き最安値だった。
原発の発電コストは0・8円増の12・5円以上になった。11年の東京電力福島第1原発事故前まで他の電源よりも圧倒的に安価とされてきた原発は、事故後に除染など事故処理費用や立地自治体への交付金なども計上しており、前回試算以降、最安値ではない。
今回の試算では、安全対策が進んだとして前回1キロワット時あたり「0・6円以上」としていた事故が起きた場合のリスク対応費用を「0・2円以上」に引き下げた。一方で建設費などの高騰を織り込んだ結果、全体ではコスト増となった。
陸上風力は1キロワット時あたり13・5~15・3円、洋上風力は14・4~15・1円となった。いずれも40年時点で新たに発電所を建設・運転した場合の試算になる。石炭火力は40年時点で新設予定はないとして試算しなかった。
今回の試算では、再生可能エネルギーの導入拡大によって生じる追加コストを加味した検証も示した。再生エネは天候などによる発電量の変動に対応するため、他の電源や蓄電池で調整する必要がある。こうした追加コストを加味すると、40年時点で事業用太陽光は15・3~36・9円になるとした。ただ、資源エネルギー庁はこの試算方法について「まだ手法として開発途上」だとしている。
試算が示された16日の有識者会議では、委員から試算方法への課題も示された。再生エネは固定価格買い取り制度(FIT)による費用も計上されているが、一部の再生エネ電源では入札制度の導入が進んでいる。委員からは「落札価格をベースに計算すべきではないか」といった意見が出た。原発についても「事故リスク算定の方法が適切かどうか検討してほしい」といった意見が出た。【高田奈実】
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